研究課題/領域番号 |
20H03669
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
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研究分担者 |
細田 和貴 愛知県がんセンター(研究所), がん情報・対策研究分野, 研究員 (00728412)
松下 博和 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 分野長 (80597782)
原 和生 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 研究員 (80740258)
山口 類 愛知県がんセンター(研究所), システム解析学分野, 分野長 (90380675)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / PDXモデル / プロテオミクス / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
膵癌の5年生存率はわずか10%未満であり、極めて予後が悪い。膵癌のゲノム情報は集積しつつあるが、有効な分子標的治療の開発には至っておらず、革新的なアプローチによって膵癌の克服に取り組む必要がある。 細胞表面タンパク質は、癌において機能的に重要な役割を果たしているだけでなく、その局在から、直接的な治療標的としても非常に有望である。細胞表面タンパク質は細胞内タンパク質に比べて極めて微量であることから、本研究では膵癌患者から採取された臨床検体を用いて患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを作成し、PDX腫瘍を用いて細胞表面タンパク質(サーフェスオーム)解析を行う。現在までに、膵癌61例においてPDXモデルを作成した。このうち23症例においては、さらに患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立した。高度免疫不全モデルであるRag-2/Jak3二重欠損マウスを用いたPDXモデルの作成効率は、60%超と良好であった。42例の膵癌PDX腫瘍について、エクソーム解析、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析の多層オミクス解析が完了した。また、10個のPDCについても同様の多層オミクス解析を完了した。データ解析からいくつかの興味深い細胞表面タンパク質分子を見出し、現在機能解析を行っている。また、膵癌公開データを用いたバイオインフォマティクス解析から同定した、膵癌で過剰発現をしているlncRNAについては、結合タンパク質Aを同定し、結合タンパク質Aの機能制御を介してアポトーシスを抑制していることを明らかにした。今後は、さらに新規治療標的分子候補の機能解析を進めると共に、臨床検体での発現を確認する。また、PDX、PDCの多層オミクスデータを格納するデータベースを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、膵癌61例において患者腫瘍組織移植(PDX)モデルを作成した。このうち、23症例から患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立した。42例の膵癌PDX腫瘍について、エクソーム解析、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析の多層オミクス解析が完了した。また、10個のPDCについても同様の多層オミクス解析を完了した。データ解析からいくつかの興味深い細胞表面タンパク質分子を見出し、現在機能解析を行っている。また、膵癌公開データを用いたバイオインフォマティクス解析から同定した、膵癌で過剰発現をしているlncRNAについては、結合タンパク質Aを同定し、結合タンパク質Aの機能制御を介してアポトーシスを抑制していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
PDXモデルの作成を継続する。PDX腫瘍、PDCの多層オミクスプロファイルを比較し、さらなる新規治療標的分子を同定し、機能解析を進めるとともに、臨床検体における新規治療標的分子の発現を確認する。また、PDX、PDCの多層オミクスデータを格納するデータベースを構築する。
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