研究課題
膵癌の5年生存率はわずか10%未満であり、極めて予後が悪い。膵癌のゲノム情報は集積しつつあるが、有効な分子標的治療の開発には至っておらず、革新的なアプローチによって膵癌の克服に取り組む必要がある。細胞表面タンパク質は、癌において機能的に重要な役割を果たしているだけでなく、その局在から、直接的な治療標的としても非常に有望である。細胞表面タンパク質は細胞内タンパク質に比べて極めて微量であることから、本研究では膵癌患者から採取された臨床検体を用いて患者腫瘍組織移植(PDX)モデルを作成し、PDX腫瘍を用いて細胞表面タンパク質(サーフェスオーム)解析を行った。現在までに、膵癌68例においてPDXモデルを作成した。このうち40症例においては、さらに患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立した。高度免疫不全モデルであるRag-2/Jak3二重欠損マウスを用いたPDXモデルの作成効率は、約60%と良好であった。42例の膵癌PDX腫瘍について、エクソーム、トランスクリプトーム、ライセートプロテオーム、サーフェスオーム、リン酸化プロテオームを含む多層オミクスデータ取得が完了した。また、20個のPDCについても同様の多層オミクス解析を完了し、CRISPR-Cas9を用いたゲノムワイド機能スクリーニングと統合して新規治療標的分子を同定した。これらのデータ解析から同定した新規治療標的細胞表面タンパク質分子についてはFACSなどで細胞表面への局在を確認したのちに、二次性薬物抗体複合体(ADC)の効果を確認した。有望な分子については免疫組織化学染色を用いて正常組織アレイと膵癌組織における発現を検討するとともに、制御機構解明や機能解析を進めている。さらに、本研究で創出したPDX、PDCの多層オミクスデータを格納し、そのバイオインフォマティクス解析が可能なデータベースを構築した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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