研究実績の概要 |
本研究では、心臓エネルギー代謝の鍵分子PPARa, PGC-1aの制御機構を解析している。令和3年度には以下の点を明らかにした。 FGF21を培養心筋細胞に添加すると、生理的な濃度においてもFGF21、AMPK, PPARa, PGC-1aの活性を著明に活性化させた。この効果はbOHBと相乗的であった。また、FGF21欠損マウスでは心筋PPARa、catalase, Nox4, Ucp2, Nrf2の発現が増加し、この上昇は血清bOHB濃度と正相関した。FGF21とbOHBはお互いに影響し合ってPPARaの活性及び酸化ストレス応答を制御することを示している。また、24時間のfastingマウスの解析から、血清bOHBの上昇は心筋でのbOHBの酸化(ketolysis)に繋がらず、エネルギー基質としては利用されないこと、酸化ストレス応答を誘導することも明らかになった。さらに、bOHBはこれまで細胞内NAD/NADH比の増加によってSIRT1・PPARaの活性化を引き起こすことが推測されてきたが、心筋細胞では異なる機構が存在することが明らかになった。腎臓細胞において、エピジェネティックな機構で抗酸化シグナルを誘導する分子としてのbOHBの役割が報告されているが、PPARaの活性制御因子としての役割は新たな発見である。
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