研究課題/領域番号 |
20H03674
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹藤 幹人 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20709117)
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研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20432255)
天野 睦紀 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90304170)
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心不全 / 心筋細胞 / キナーゼ |
研究実績の概要 |
これまで心不全は、心収縮能が低下する病態とされてきたが、近年、心臓が硬くなり拡がりにくいために症状を呈する「収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)」が高齢者特有の心不全として注目されている。従来の心収縮機能低下を標的とする治療法ではHFpEFの治療効果は乏しく、超高齢社会をむかえるなかでHFpEFに対する新たな治療法の開発が求められている。既に加齢および心不全により発現が増加する機能未知のGタンパク質共役受容体(adhesion-GPCR X)を同定し、遺伝子欠損マウスを用いた予備的実験を行い、adhesion-GPCR X の下流で活性化するα-kinase XがHFpEF発症に関わることを見出した。CRISPR/CAS9システムにより、Cre発現依存的α-kinase X欠損マウスを作製した。研究代表者が開発した薬物誘導性心筋特異的Creマウスと交配し、心筋特異的α-kinase X欠損マウスを作製した。 NOS阻害薬(L-NAME)と高脂肪食(HFD)摂取によるHFpEFマウスモデルを用いて、心筋特異的α-kinase X欠損マウスがHFpEFを抑制するかを検討した。心臓超音波を用いてE/AとE/E’により心臓の拡張障害を評価したところ、α-kinase X欠損マウスは拡張障害が悪化したことから、α-kinase XのHFpEFへの関与が示唆された。さらにカテーテル検査にて心臓の拡張能が障害されていることも明らかにした。免疫免職法により心筋組織を評価したところ、心臓間質の線維化の変化は乏しいことから、α-kinase Xは心筋細胞の拡張能を制御していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染により研究施設利用や海外からの試薬の取り寄せに制限があった時期があったが、研究自体は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
心筋特異的adhesion-GPCR X欠損マウスに対して、NOS阻害薬(L-NAME)と高脂肪食(HFD)摂取によるHFpEFマウスモデルを用いて、心筋特異的adhesion-GPCR X欠損マウスがHFpEFを抑制するかを検討する。心臓超音波を用いてE/AとE/E’により心臓の拡張障害、カテーテルを用いた心内圧測定による拡張障害の評価、生存率などを明らかにする。Hematoxylin-Eosin染色、Picro-Sirius Red染色、Azan染色、各種特殊染色により、心筋の性状を検討する。原子間力顕微鏡(Core AFM Nanosurf)を用いて心臓の表層および心臓凍結切片を評価する。原子間力顕微鏡は探針と試料表面との間に働く力(弾性率)を検出することにより試料の硬さの評価が可能であり、adhesion-GPCR X 欠損マウスでは心臓の硬化がどの程度抑制されるかを示す。メカノストレスによる心筋細胞の硬化を評価する。adhesion-GPCR X欠損マウスから単離した心筋細胞をシリコン膜ストレッチチャンバー上で培養し、一軸性進展刺激を加えた時の心筋細胞の反応(アクチン線維の配向の変化、ミオシン軽鎖のリン酸化)を定量することで心筋細胞の硬さを評価する。 α-kinase Xの基質同定のため、遺伝子欠損マウスから心筋細胞を単離し、細胞溶解液をリン酸化カラムに添加し、リン酸化されたペプチドを収集する。収集したサンプルを質量分析法により解析し、α-kinase Xによりリン酸化される物質およびリン酸化部位を決定し、心筋細胞の拡張メカニズムを検討する。
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