研究課題/領域番号 |
20H03681
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安田 聡 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00431578)
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研究分担者 |
西村 邦宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70397834)
野口 暉夫 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 副院長 (70505099)
泉 知里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70768100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 循環器疾患 / 人工知能 / 予後 / 予測医療 / 先制医療 |
研究実績の概要 |
世界に例をみない速度で進む超高齢社会の本邦において、循環器疾患診療の整備は喫緊の課題である。脳卒中を含む循環器疾患は日本人の死因の25.5%を占め、国民医療費の約20%を占める(がん13%)という現状を生み出している。近年、ビッグデータの利用がさかんに行われるようになってきている。更に人工知能(artificial intelligence、AI)応用の進歩に伴い、従来の古典的単層ニューラルネットワークからhidden layerを多層化させて,学習能を向上させることが可能な深層学習手法が開発されてきており、画像認識において自動的に高い識別能を示すことが近年明らかになってきている。AIを活用し先端的な診断技術・経験の定量化・自動化することにより診断精度向上と先制医療への応用について検討する。具体的には ① 循環器疾患に関する先端的な診断技術・経験の定量化・自動化を実現するためにAIを活用した診断支援システムを開発すること ② 新たな画像認識システムによりハイリスク症例を効率的に抽出し 先制医療を実践すること を目的に研究を遂行している。核磁気共鳴装置(MRI)非造影T1強調画像による冠動脈高輝度プラーク(High Intensity Plaque; HIP)は心血管イベントと強く関連することを世界に先駆けて報告している。さらに冠動脈HIPの輝度はプラーク安定化作用のあるスタチンの投与によって減弱することを前向き介入試験にて明らかにしている。またAIを用いた自然言語処理により既存の電子カルテから循環器疾患レジストリー構築に必要な情報を自動抽出するシステムを構築するなどの実績を蓄積してきている。これまで約1 年半の継続した辞書チューニングにより,抽出した症候を既存の予測モデルに加えた場合,10%程度の心筋梗塞後患者のイベント予測精度の向上が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究①MRIによる冠動脈ハイリスクプラークの同定とAIによる自動定量システムの開発:冠動脈MRIを施行した症例を対象に、主として深層学習を用いたAI による画像認識を応用、冠動脈高輝度プラーク(HIP)を自動抽出する手法の開発を行った。冠動脈MRI画像に関して、DICOM情報を利用してConvolutional Neural Networkなどの深層学習により、HIP陽性領域と非陽性領域を検出するアルゴリズムを構築した。二次元画像データのみならず、独自に構築した3D画像の解析結果をもとにHIPの立体的構造についても、3D-CTとの重ね合わせによる部位のannotationも含めた解析を行った (J Cardiovasc Magn Reson. 2020 Jan 16;22(1):5. doi:10.1186/s12968-019-0588-6.) 研究②AIを用いた心不全患者予後の高精度予測方法の開発:米国NCDRが提唱している循環器疾患診療の医療の質評価のためのPINNACLE Registry (https://cvquality.acc.org/NCDR-Home/registries/outpatient-registries/pinnacle-registry) 216項目のうち54.2%は検査値・処方など構造化データであり抽出は可能でであった。更にIBMワトソンエクスプローラーを使用した自然言語処理の手法を通じて、追加の抽出をおこない全項目の95%の抽出が可能であった。また心臓エコー検査について、日本循環器学会SEAMAT準拠の心臓カテーテル検査・心エコー検査(89項目)についても合わせて抽出の辞書チューニングを行い、自由記載項目を除く60項目の抽出に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
AIを用いた心不全患者予後の高精度予測方法の開発を進めていく。心不全入院患者(~1200例)を対象に詳細な心エコー図検査による心機能指標を経時的に測定、変動データと複合エンドポイント(全死亡の発生もしくは心不全入院)の関連性について検討する。従来法より予測精度の高い自己相関を考慮した混合効果モデルによる解析、さらに繰り返し測定に伴いランダムに生じる誤差と心不全の変動を伴いがらも悪化していく過程を示す系統的誤差を峻別し得る状態空間モデル(ベイジアン動的線形モデル)を用いて予測を行う。更に測定マーカーの変動データを、サポートベクターマシン、勾配ブーステイングなどの機械学習手法、および検査値および画像に対する深層学習により解析し、組み合わせることによる学習精度の向上を図るアンサンブル学習の手法を用いて精度の向上を試みる。心エコー指標などの変動データを、サポートベクターマシン、勾配ブーステイングなどの機械学習手法、検査値および画像に対する深層学習により解析し組み合わせることにより、学習精度の向上を図るアンサンブル学習の手法を用いて予後予測精度の向上を試みる。特に研究②において作成した所見をもとに、者背景の基礎統計から予後予測までのモデル構築関して半自動的にAPI化したプログラムを作成することを目指す。
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