研究課題/領域番号 |
20H03681
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安田 聡 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00431578)
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研究分担者 |
西村 邦宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70397834)
野口 暉夫 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 副院長 (70505099)
泉 知里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70768100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 循環器疾患 / 人工知能 / 予後 / 予測医療 / 先制医療 |
研究実績の概要 |
研究①MRIによる冠動脈ハイリスクプラークの同定とAIによる自動定量システムの開発 核磁気共鳴装置(MRI) 非造影T1強調画像法にて検出される高信号プラーク(high intensity plaque; HIP)は将来の心血管イベントを予測するバイオマーカーである。冠動脈MRI画像に関して、DICOM情報を利用してConvolutional Neural Networkなどの深層学習により、HIP陽性領域と非陽性領域を自動検出する連続性抽出プログラムの開発を行っている。本年度は、開発したHIP抽出プログラムを冠動脈疾患症例100例以上に応用して80%を超える検知能力があることを確認することができた。 研究②AIを用いた心不全患者予後の高精度予測方法の開発 人工知能による機械学習は多因子・複数の変数がある際にその相互作用を考慮して重要度を選択する作用を有する。単純な線形の比例関係によらない関係も含めてのモデル作成し、従来方法を遥かに凌ぐ予測精度を持つアルゴリズムの開発を行った。心不全患者の予後予測(1年後の死亡もしくは補助人工心臓装着)において既存の層別化リスク評価モデル(Seattle Heart Failure model, Circulation 2006)の精度を10%程度上回る成果となった。 研究③循環器疾患予後予測へのAI技術の応用 国立循環器病センター薬剤部が保有する副作用データベースと循環器疾患PINNACLEデータベースの電子カルテ経過情報から自然言語処理にてデータを抽出・統合した18,149例について肝障害を予測するAIを構築した。予測因子として薬剤処方+臨床背景情報を合計で602個について検討し102個が特に重要でAUCの最大値に関与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AI 応用によるリスク予測に関する研究事例はこれまで限定的であった。深層学習の精度は近年急速に進歩しており特に画像認識については研究が蓄積されてきている。本研究では更に複合的なリスクを有する循環器疾患患者に対して機械学習を行うことで、リスクの個別化という重要なテーマに取り組んでいる。MRI非造影T1強調画像による冠動脈高輝度プラーク(HIP)は心血管イベントと強く関連するという過去の知見を基に、画像認識の精度の向上=HIPを自動検出する連続性抽出プログラムの開発を進めている。新たな画像認識システムによりハイリスク症例を効率的に抽出し 先制医療 (Preemptive Medicine)につながることが期待される。心不全症例を対象とし開発したリスク評価モデルでは、従来のSeattle Heart研究、MAGGICなどの予後予測モデルより約10%程度の精度向上(5-fold cross validationのAUC平均値で0.81)を認めている(論文投稿中)。新たな診断補助システムを活用することで再入院の抑制などその負担軽減に寄与することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
心不全その他の循環器疾患の予測モデルに関しては、データベースに関して機械学習用に全体の70%の参加者を割り当て、残りの30%をテスト用データとする。解析に先立ち、データのカテゴリーごとへの分類を行う。次に欠損値のチェックを実施し、欠損値が30%に及ぶ項目については項目自体の除外を行う。各因子間の線形解析を実施しrが0.75以上の相互関連性を有する因子については片方についての除外を検討する。得られたデータベースを利用して機械学習を実施する。機械学習の手法としては決定木を勾配ブースティングによるアンサンブル学習する手法を使用(Xgboost, Light GBM)し、その他random-forest, ラッソ/リッジ回帰などの手法を用いた解析を実施する。この段階では条件分岐を持った幾つかの決定木を前回のモデルで生じた誤差を訓練データとして次の学習を繰り返し、最終的には最も誤差が少ないモデルを作成することを目指す。
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