研究課題/領域番号 |
20H03685
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平原 潔 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (00707193)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 線維化誘導-病原性CD4+ T細胞 / 肺の線維化 / single cell RNA-Seq / ATAC-Seq / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、慢性炎症による肺の病的リモデリング(線維化)を誘導する分子機構を明らかにすることを目的とする。具体的には、 1. 肺の組織線維化に深く関与する線維化誘導-病原性CD4+ T細胞の分化経路の解析から、病原性機能の獲得や維持、組織常在性を司る転写因子を同定する。 2. 慢性炎症時に肺の組織中に誘導される異所性リンパ組織の一種であるiBALTに着目し、微小環境(場)の1細胞レベルの網羅的解析から組織常在性を制御する環境側の因子の同定を目指す。 3. ヒト(患者)の組織及び細胞で、最先端解析技術を用いて検証を行う。 今年度は、当初の予定通り、遺伝子X1のmode of actionについて解析を進めることができた。さらにヒト検体を用いたPOCを得ることを目的とした研究も順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 線維化誘導-病原性CD4+ T細胞の分化制御機構の解明および新規機能分子の探索 : 今年度は、遺伝子X1-レポーターマウスを用いて、遺伝子X1のmode of actionについて解析を進めた。具体的には、遺伝子X1-レポーターマウス由来の遺伝子X1陽性細胞をcell sorterで単離してconventional RNA-sequencingを行った。その結果、遺伝子X1陽性細胞は、様々な炎症性サイトカインを多量に発現する細胞集団であることが明らかになった。さらに、FACSを用いてタンパク質レベルでのサイトカイン産生を解析したところ、RNA-sequencingの結果と同様に遺伝子X1陽性細胞は、各種の炎症性サイトカインを産生していた。これらの結果から、遺伝子X1は、線維化誘導-病原性CD4+ T細胞野中の病原性を制御する因子の一つである可能性が示唆された。 2. “線維化誘導-病原性CD4+ TRM細胞”の維持を担う微小環境の1細胞レベルの網羅的解析 : 遺伝子X1-レポーターマウスを用いた解析で、遺伝子X1を発現した“線維化誘導-病原性CD4+ T細胞”は、iBALT近傍に集積していることを見出してきた。iBALTを含む微小環境の細胞集団について、single cell RNA-sequencingを用いた解析を開始した。 3. ヒト患者検体を用いた解析(proof of concept): 好酸球性副鼻腔炎患者の検体を用いて、遺伝子X1の発現についてsingle cell RNA-sequencingによる単一細胞レベルでの解析を行なっている。好酸球性副鼻腔炎患者の鼻ポリープ中に遺伝子X1を高発現する細胞集団を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 線維化誘導-病原性CD4+ T細胞の分化制御機構の解明および新規機能分子の探索 : 令和3年度に引き続き、遺伝子X1の“線維化誘導-病原性CD4+ T細胞”における作用機序の解析を進める。具体的には、遺伝子X1に対する抗体を用いたChIP-sequencingを行い、遺伝子X1の直接のターゲット遺伝子群を同定する。 2. “線維化誘導-病原性CD4+ TRM細胞”の維持を担う微小環境の1細胞レベルの網羅的解析 : 引き続き、線維化組織において誘導されるiBALTと遺伝子X1陽性線維化誘導-病原性CD4+ T細胞の関係について、single cell RNA-sequencingの解析を進める。 3. ヒト患者検体を用いた解析(proof of concept): 令和3年度に我々が同定したヒトにおける遺伝子X1陽性CD4+ T細胞について、その特徴を詳細に解析する。 以上の1~3の研究を推進することにより、線維化誘導-病原性CD4+ T細胞の分化制御機構についてその全貌解明を目指す。また、これまでの研究成果を論文化し、本研究の重要性を社会に広く伝える。
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