研究実績の概要 |
進行性肺線維化の機序を明らかにするため家族性肺線維症を含む家族性間質性肺炎(FIP)を中心に責任遺伝子の同定、その責任遺伝子変異に関連する肺線維化の 進展機序について研究を進めてきた。最終年度であるが、家族性間質性肺炎、若年性間質性肺炎についても16症例についてwhole exome解析を実施し、rare variantは、SFTPA1 2例,TERT 1例, PARN 1例, ABCA3 1例を同定した。 SFTPA1/A2の変異において肺組織におけるトランスクリプトーム解析を行うためにSFTPA1, SFTPA2, 遺伝子変異のないIPF症例についてbulk RNA-seqを実施した。組織検体については線維化の強い部分と少ない部分についても解析を行った。これらの結果、1) SFTPA1, SFTPA2変異についてはこれまでの研究からhetero接合体, homo接合体においても分泌不全をおこしていたが、転写レベルは低下していなかった。2) 小胞体ストレスに(ER stress)関わるUPRのシグナル分子についても転写レベルは低下していなかった。3) apoptosis, necroptosisに関連する分子の転写レベルが高まっていた。これらの結果から慢性的なER stressのストレスでは、既報と逆の結果となっており、細胞死へのシグナルが高まっていた。また、肺組織検体を用いず、末梢血から樹立したiPS細胞を用いた肺オルガノイドからのI I型肺胞上皮細胞の解析を試みた。まずSFTPA1/A2よりもER stressの大きいSFTPC変異のiPS由来肺オルガノイドを用いた解析では、強いER stressが誘導されず、臨床的状況を反映できていない可能性も示唆され、現状で臨床検体のsurrogate検体とするのは、まだ詳細な検討が必要であることが明らかになった。
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