研究課題/領域番号 |
20H03691
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆明 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70168392)
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研究分担者 |
佐藤 陽之輔 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (00823311)
永原 則之 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10208043)
藤野 孝介 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10837339)
長谷川 功紀 福島県立医科大学, 保健科学部, 教授 (50525798)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / ASCL1 / YAP1 / ROR2 / WNT5a / 次世代シークエンサー解析 / フローサイトメーター解析 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
小細胞肺癌(SCLC)の細胞系譜転写因子ASCL1の標的分子として、ASCL1-Chip sequence解析(Borromeo et al. 2016)およびRNA sequence解析(Kudoh et al 2020)より、Wntシグナル関連のROR2が見いだされた。ASCL1は、SOX2, INSM1などの転写因子と相互依存性の発現調節関係をもって、SCLCの細胞生物学的な特性を制御していると考えられる(日本病理学会2021)。私たちは、ROR2は、SOX2の標的分子でもあることも、SOX2のChipSequence解析から明らかにしている(Tenjin et al 2020)が、このことからも、ROR2が、ASCL1と関連した重要なシグナル分子であると考えられる。一方でまた、ASCL1陽性のSCLC、細胞分化、形態、薬剤耐性など性格が異なるASCL1(-);YAP1(+)のSCLCにおいても、ROR2が陽性になることを見出した(Saito et al. 2022)。 2021年度は、ASCL1(+)およびASCL1(-)のSCLCでのROR2の機能解析をSCLC培養株およびSCLC患者由来のPDXモデルを用いて進めてきたが、ROOR2の免疫組織学的な解析とflow cytometerを用いた解析から、ROR2の発現は腫瘍内heterogeneityを認めること、また、ROR2高発現の細胞は、細胞増殖能が高いことを見致した。 一方、ASCL1はNotchシグナルに抑制的に制御されているが、マウス胎仔肺上皮のNotchシグナル不活化時に、ASCL1陽性の分化転換が起こるsingle cell RNA sequence解析から、ASCL1関連の転写因子群の解析も始めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ROR2をASCL1の標的分子であることを見出した研究のスタートであったが、ASCL1陰性のSCLCにもROR2の発現があり、また、培養条件によりROR2の発現が変化するなど、当初考えていたROR2の発現機構が複雑であることが解った。他のSCLCの細胞系譜転写因子との関係を見直していいる。また、ROR2の結合分子を過去の私たちの結果からWNT11と考え、質量分析や、シグナル解析などを繰り返してきたが、成果が出ず、WNT5aに切り替えたところ、Wnt経路のシグナルが動くことがわかった。結合分子や、阻害分子の研究を、WNT5aを標的にして、これから進めなおしていく予定。
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今後の研究の推進方策 |
①ROR2-high, ROR2-lowのSCLC細胞を用いて、ROR2の機能解析を進める。②WNT5aを中心に、シグナル経路の解析をする。③マウスモデルを用いて、Ascl1関連の転写因子群を明らかにするとともに、多段階SCLC発生モデルを用いての、Ascl1関連分子の変化を明らかにする。 ④上記実験から見いだされ分子群の発現を、切除標本、培養細胞、Pdxモデルなどで、解析する。
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