研究課題
全期間を通してマウス胎児の気道上皮、および間充織組織の分化プロセスを、scRNA-seqを使って1細胞解像度で解析を行った。得られたデータをインフォマティクス解析により精査し、いくつかの興味深い分子動態を発見した。気管上皮の組織幹細胞である基底細胞がE14.5という比較的早期に運命決定がなされることを見つけ、特に間充織組織におけるTGFb遺伝子の上昇とその下流で起こる上皮細胞の細胞増殖低下が基底細胞の分化誘導に重要な役割を与えることを発見した。特に、TGFbシグナルが上皮前駆細胞のId遺伝子群の発現を抑制することがきっかけで細胞周期が抑制され、分化が始まることを見出した。TGFb受容体欠損上皮では基底細胞の分化のタイミングが遅れることが示された。この知見を組織再生研究に発展させ、成体マウスの気道損傷再生研究を行った。気道上皮が傷害を受けると組織幹細胞である基底細胞内にId遺伝子が上昇して細胞増殖が始まることがわかった。すなわち、発生とは逆の分子動態により組織再生を行っていることがわかった。Id遺伝子を過剰発現した気道上皮では、損傷後に基底細胞の増殖が早期に始まることが示された。また、発生中の気管間充織組織のscRNA-seq解析から、気管軟骨と気管平滑筋の起源が明確に異なること、また気管軟骨と気管間充織組織が共通の由来を持つことがわかった。それぞれの組織が求めるシグナル分子を時系列に整理し、ヒトES細胞から気管組織を分化誘導する試みを行った。米国シンシナティ小児科病院の研究者と共同研究を行いながら、内胚葉由来臓器の間充織組織を誘導するプロトコールを確立し、さらにヒト気管間充織組織の軟骨細胞、平滑筋細胞を誘導することに成功した。現在は上皮細胞との共培養の条件検討を続けている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature protocols
巻: 17 ページ: 2699-2719
10.1038/s41596-022-00733-3
https://www.riken.jp/press/2022/20220818_1/index.html