研究実績の概要 |
肺腺がん由来SNPチップデータが取得された5,416例とコントロール29,696例を用いてHLA-imputationを実施し、SNP並びにHLAアリルに着目した関連解析を実施した。さらに候補となるHLAアリルと連鎖不平衡が強いSNPを抽出し、invader法とTaqMan法を組み合わせて、11,670例の肺腺がん症例と121,958例の非がんコントロールを用いて関連解析を実施し、複数のHLAに位置するバリアントが肺腺がんの発症リスクと関わることを見出した。またこれらのバリアントはEGFR変異陽性肺腺がんでより強く発がんリスクと関連した。アジア人で最も高頻度に認められるHLA-A *24:02アリルが最も発がんリスクを示したことから、本アレルに着目して1,167例の肺腺がん由来のがんゲノムデータ(全エクソンシークエンス)を用いて体細胞変異解析を実施した。各HLA別で体細胞変異数をカウントしたが、各アレル間での体細胞変異数に差は認められなかったが、発がんリスクに関わるHLA-class I アリルに着目してネオアンチゲン数を算出したところ、リスクアリルではそれ以外のアリルに比べて認識できるネオアンチゲン数が少ないことが分かった。RNAシークエンスデータを用いた腫瘍浸潤性T細胞の量との相関解析を検討したところ、HLA-class IIに位置するリスクに関わるバリアントは腫瘍浸潤性T細胞の量と相関することを見出した。以上の結果より、発がんリスクを伴うHLAアリルをもつ腫瘍では、免疫能が低下している可能性がある。これらの結果については、現在論文投稿中である。今年度は、免疫チャックポイント阻害剤の治療効果や有害事象との関連について検討するため、対象となる症例をそれぞれ数百例選択し、全エクソンシークエンス・RNAシークエンスを追加で実施し、最終年度に関連解析を実施する予定である。
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