研究課題/領域番号 |
20H03696
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岩野 正之 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (20275324)
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研究分担者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10115280)
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
糟野 健司 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (60455243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / FSP1 / チオレドキシン / PET/MRI / サイクロプリン |
研究実績の概要 |
1)われわれが発見した抗酸化物質である分泌型FSP1について、抗酸化作用を誘導する機序を明確にした。近位尿細管上皮細胞株であるmProxを用い、分泌型FSP1を添加することで発現誘導される物質を網羅的に調べる目的で、DNAマイクロアレイを実施した結果、slc7a11, cystathionine, sqstm1, HO-1のmRNA発現量が5倍以上に上昇していた。さらに、Real time PCRにより、上記結果を確認した。これらの物質はすべてNrf2活性化に関連することから、分泌型FSP1の抗酸化作用はNrf2の活性化を介することが示唆された。分泌型FSP1の作用が受容体であるRAGEを介することを明らかにするために、分泌型FSP1の受容体であるRAGE発現をノックアウトしたmProxをCRISPR/Cas9によるゲノム編集で作製した。 2) シスプラチン腎症と虚血再灌流モデルにおけるサイクロプリン発現量をわれわれが開発したサイクロプリンELISAで測定した。虚血再灌流モデルとコントロールにおけるサイクロプリン量は、それぞれ 2.1/106 nucleosidesおよび1.3/106となり、有意差はないが虚血再灌流モデルで増加していた。一方、シスプラチン腎症モデルでは、サイクロプリンの増加は認められなかった。 3)酸化ストレス・イメージングを実施した。 福井大学医学部附属病院腎臓内科に通院中の患者で、文書による研究参加の同意が得られたものを対象に、酸化ストレス・イメージングを実施した。現在のところ、64Cu-ATSMの集積量と尿蛋白量に有意の正相関があることが明らかとなっている。また、64Cu-ATSMの集積量が腎血流量を反映することも明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の柱となる実験データが順調に集積されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年同様に、1)酸化ストレス・イメージングの実施、2)われわれが発見した抗酸化物質を用いた検討、を実施する。 1)酸化ストレス・イメージングの実施 福井大学医学部附属病院腎臓内科に通院中の患者で、文書による研究参加の同意が得られたものを対象に、酸化ストレス・イメージングを実施 する。64Cu-ATSMの集積量と腎疾患の種類に関連があるかを検討する。さらに、64Cu-ATSMの集積量と尿蛋白量、尿中BMG、L-FABP、NAG、8-OHdG 、チオレドキシン、eGFRなどの臨床指標やバイオマーカーとの相関について検討する。 2)われわれが発見した抗酸化物質を用いた検討 本年度、分泌型FSP1を尿細管上皮細胞に添加することで発現誘導される物質を網羅的に探索した結果、新たにslc7a11, cystathionine, sqstm1 が同定された。また、昨年度、分泌型FSP1の受容体であるRAGE発現をノックアウトした尿細管上皮細胞 (mProx)をCRISPR/Cas9によるゲノム編 集で作製した。本年度は、これら新規因子がRAGEを介して発現誘導されるか否かを検討する。既報論文より、これら新規因子はNrf2の活性化と グルタチオンの産生増加を介して抗酸化作用を発揮することが想定されるため、分泌型FSP1が尿細管上皮細胞における総グルタチオンおよび還 元型グルタチオンの産生を誘導するか検討する。さらに、in vivoでの分泌型FSP1の作用を検討するため、ポドサイト特異的にFSP1を過剰発現 させた遺伝子改変マウスの腎皮質に総グルタチオンおよび還元型グルタチオンの産生増加が認められるか否かを検討する。
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