研究課題/領域番号 |
20H03701
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松岡 悠美 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 教授 (10402067)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / アレルギーマーチ / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis, AD)に対する治療は、ヒト型抗ヒトIL-4/13モノクローナル抗体が保険適応となり、既存の治療ではコントロールに難渋していた症例を劇的に改善することが可能となった。その一方で、製剤は高額であり)、疾患そのものを治癒させるものではないため、その治療の継続は、患者負担のみならず、日本の医療経済全体にも大きな負担をもたらしている。また、日本のAD有病率は厚生労働省AD調査班の2016年の報告で、生後4ヶ月から大学生までのいずれの年齢でも1割前後と高い水準となっている。さらに、乳幼児期のADを起点とし、続いて小児期に、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などが次々と異なる時期に出現する。このような現象は「アレルギー・マーチ(atopic march)」と呼称され、アレルギー・マーチの発症、進展を予防することが重要な課題で、これらの観点からADの予防法の開発は急務である。これまでに、乳児から経時的に得られた、マイクロバイオームの経時的な変遷を解析した。これらの結果では、これまで、アトピー性皮膚炎に引き続いて食物アレルギーが起こるという、アレルギーマーチが起こることが定説であったが、全例にスキンケアの介入を行ったところ、AD発症した乳児のマイクロバイオームの多様性は健常乳児とかわらなかったものの、Class2以上の食物感作を起こした乳児では有意に菌叢のアルファ多様性が低下しているという、これまでの定説とは異なる結果を得た。さらに詳細に解析すると、生後3日目の新生児皮膚の細菌叢が健常人とAD発症では異なっていることが明らかになった。すなわち、1歳にADを発症するヒトの皮膚では生後3日目にすでに細菌叢の乱れが起こっていることが明らかになったので、細菌叢そのものもしくは宿主因子の未病期の解析時期が絞り込まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験施設の改修工事の遅れ及び、新施設の稼働率の持続的な抑制により、動物実験をほとんど遂行することができなかった。一方でヒトデータの2次解析の結果からは、予想を上回る興味深いデータが出てきており、全体の進行状況を加味してやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
動物施設の利用状況が依然不透明であるため、次年度以降の遅延も予測される。すでに採取されているトランスクリプトーム解析をさらに進めるなどを行なっていく。
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