研究課題/領域番号 |
20H03703
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
森田 明理 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30264732)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 紫外線 / 制御性T細胞 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
乾癬、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の病変部からの皮疹血リキッドバイオプシーを行い症例を集積を行った。皮膚T細胞性リンパ腫19例から、皮疹血リキッドバイオプシーを行い、末梢血とともに解析を行なった。CD4+CD45RO+細胞、CD8+CD45RO+細胞の割合が皮疹血で有意に高く、病変部では、CD8+CD45RO+細胞と、CTCLの皮膚評価スコアであるmSWATが逆相関していた。さらに皮疹血と末梢血の血清を比較すると、CCL17、CCL22など悪性T細胞を誘導するケモカインが皮疹血で高いことがわかった。RNA-seqで発現遺伝子を比較したところ、皮疹血のCD4+CD45RO+細胞ではCTCLの腫瘍細胞に特異的な遺伝子が多く発現していた。TCRレパトア解析にて偏位したT細胞受容体が検出された。皮疹血のCD8+CD45RO+細胞では細胞分裂阻害に関わる遺伝子が多く発現され、末梢血のCD8+CD45RO+細胞では炎症に関わる遺伝子が多かった。皮疹血で多かったCD8+CD45RO+細胞は、腫瘍特異的なcytotoxic T lymphocyteの可能性があるため、また、病変部ごとにどのような変化があるかについて、stageIIBのCTCL患者から、紅斑、局面、腫瘤の皮疹血を採取し病変内のCD8+CD45RO+細胞の確認、皮疹血のCD8+CD45RO+細胞のレパトア解析を行なった。異なる病変部からは、異なるレパトアを持つCD8+CD45RO+細胞が認められ、同じ病変部から皮疹血を採取した場合は、同じレパトアを持つCD8+CD45RO+細胞が検出された。CTCLの皮疹血では、末梢血よりも病態に関わる細胞、ケモカインが認められることがわかった。皮疹血には皮膚疾患特異的な細胞やタンパク質が含まれる可能性があり、他の炎症疾患の診断に役立つ可能性がある。また、同時にnTreg(内在性制御性T細胞)の誘導波長解析もついても、モノクロメーターに加え、UV-LEDを用い解析を行い、UVC~UVBが誘導波長であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚病変の皮疹血リキッドバイオプシーのテクニックの確立に成功した。乾癬、皮膚T細胞リンパ腫の病変部から、皮疹血リキッドバイオプシーで微小免疫環境の解析を行うことができ、症例を集積しているところである。皮膚T細胞性リンパ腫19例から、皮疹血リキッドバイオプシー有用性を示すことができた。皮膚T細胞性リンパ腫で、T細胞レパトア解析を行い、レパトアの偏りが明らかとなったきた。現在、詳細な解析をすすめている。 平行して、nTreg(内在性制御性T細胞)の誘導波長解析についても、モノクロメーターに加え、UV-LEDを用い解析をすすめている。UVC~UVBが誘導波長であることを見いだした。マウス皮膚においても、同様に皮疹血を用い、同時に末梢血もしくはリンパ節・脾臓から高速セルソーターでリンパ球を分離し紫外線(~可視光線)の選択的波長の利用することによるTreg誘導が明らかにする予定である。あわせて、シングルセルRNAシークエンス解析をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、311nmナローバンドUVB・308nmエキシマライト・PUVAバス・UVA1照射(治療)前後で、皮膚病変の皮疹血リキッドバイオプシーを行い、リンパ球を分離し、CyTOFによる多重染色、高速セルソーター(BD FACS melody)を用いたシングルセル解析、次世代シーケンサによるトランスクリプトーム解析などを行いメカニズムの解明を進め、誘導されるTregのサブセット解析、さらなる効率的なTregの誘導の基盤開発を進めていくこと。また、皮膚T細胞性リンパ腫で、T細胞レパトア解析を行い、レパトアの偏りから病態や腫瘍細胞のマーカーの探索、さらには、nTreg(内在性制御性T細胞)の誘導波長解析を行い、次の申請に繋げていく。
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