研究課題
汗孔角化症とは、メバロン酸経路に関わる代謝酵素をコードする遺伝子の欠損により皮疹が生じる疾患である。汗孔角化症患者の2症例において、正常部と病変部のそれぞれから組織を採取し、初代培養ケラチノサイトを樹立した。いずれの細胞も、血清存在下では同じ増殖を示した。ところが無血清培地においては、正常皮膚由来のケラチノサイトは血清存在下と同様に増殖したのに対し、病変部皮膚由来のケラチノサイトは死滅した。無血清培地にコレステロールを添加したところ、病変部由来のケラチノサイトも正常に増殖したことから、患者病変部表皮の細胞ではメバロン酸経路が機能していないためにコレステロールの生合成ができず、正常に増殖できないことが考えられた。これら2種類の細胞間で生じる細胞競合現象を解析するために、2種類の細胞を単独培養した時には生じず、2種類の細胞を混合して培養した場合に生じる現象を探索した。2種類の細胞を適切な比率で混合し、正常細胞が変異細胞に取り込まれる条件と、逆に変異細胞が正常細胞に取り囲まれる培養条件においてmRNA発現を網羅的に比較した。変異細胞においては、コレステロール生合成経路の酵素のmRNA発現が上昇しており、コレステロール不足によるフィードバックが働いていることが考えられた。また、汗孔角化症の疾患モデルマウスを作成するため、 汗孔角化症の原因遺伝子であるMVDとMVKについてfloxマウスを作成した。本マウスにおいてcre-loxP組み換えを皮膚の一部で誘導することにより、MVDまたはMVKをモザイク状にノックアウトして汗孔角化症モデルマウスを作成し、in vivoで細胞競合を観察することが可能となる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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