(1)ILC2の活性化に関わると報告されているサイトカインであるIL-33、IL-25、TSLPの欠損マウスにMC903を用いてアトピー様皮膚炎を誘導すると、IL-33およびIL-25欠損マウスでは野生型マウスとほぼ同程度の皮膚炎が形成される一方、TSLP欠損マウスではILC2の増殖と皮膚炎が顕著に減弱した。このことからMC903誘導性アトピー様皮膚炎モデルにおいてはTSLPがILC2の活性化に重要であることがわかった。 (2)MC903誘導性アトピー様皮膚炎モデルのシングルセルRNAseq解析を行い、皮膚炎前後におけるILC2における遺伝子変動を比較した。皮膚ILCは発現遺伝子の変動によって14のクラスタに分かれ、皮膚ILCのヘテロジェネイティが明らかとなった。発現が上昇した遺伝子のリストを詳細に解析すると、interferon-γに関連した遺伝子群が浮かび上がってきた。interferon-γの受容体を欠損したIfngrノックアウトマウスにおけるMC903誘導性アトピー様皮膚炎モデルを解析した。その結果、ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して皮膚の肥厚とILC2数の増加が皮膚炎の後期でも持続したことからinterferon-γがILC2に対して抑制的に働くことが示唆された。 (3)シングルセルRNAseqの結果から皮膚ILC2はIL-18の受容体を高発現していることがわかった。そこでIL-18の受容体を欠損したIl18rノックアウトマウスにMC903を塗布しアトピー様皮膚炎モデルを誘導しILC2の活性化と皮膚炎の程度を評価した。その結果、ノックアウトマウスは野生型マウスとほぼ同程度の皮膚炎が観察され、ILC2の活性化およびIL-5やIL-13の産生量も野生型マウスとの間で違いは認められなかった。このことから少なくともMC903誘導性アトピー様皮膚炎モデルにおいては皮膚ILC2に対してIL-18は関与していないことがわかった。
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