研究課題/領域番号 |
20H03710
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
保仙 直毅 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10456923)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CAR-T細胞 |
研究実績の概要 |
令和2年度に同定した急性骨髄性白血病細胞特異的抗体の認識抗原の正常血液細胞での発現を、既存の抗体がある場合にはフローサイトメトリーによりタンパク質レベルで、ない場合にはRT-PCRによりmRNAレベルで解析した。その結果、抗原タンパク質の発現自体は正常血液細胞にも見られ白血病特異的でないが、抗体の結合が白血病特異的であった、抗原Aを認識する抗体X(出願準備中の為仮名)を候補の抗原、抗体としてこれらに研究対象を絞り研究を進めることとした。現在、構造生物学者との共同研究により、その白血病特異性の解明を行うべく準備を進めた。また、並行して以下を行った。①多くの急性骨髄性白血病検体に抗体Xが結合するか否かを検討し、多数例での結合が見られた。②抗原Aを発現する正常非血液臓器に抗体Xが結合するかどうかの検討を開始した。③抗体Xを元に作製したCAR-T細胞が、抗腫瘍効果を有するかどうかの検討を行い、in vitroにおける白血病細胞との共培養にて有意なサイトカイン産生と細胞傷害活性を示した。さらに、ルシフェラーゼを発現させた白血病細胞株を移植しておいた免疫不全マウスに上記のCAR-T細胞を投与した後、IVISを用いて、腫瘍量をフォローしたところ、CAR-T細胞投与群で、コントロール群に比べて有意な腫瘍量の低下がみられ 、in vivoでの強い抗腫瘍効果が示された。現在、患者由来白血病細胞を免疫不全マウスに生着させた後にCAR-T細胞を投与する同様の実験を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性骨髄性白血病特異的抗体が認識する抗原として同定された抗原タンパク質の正常血液細胞での発現を、既存の抗体がある場合にはフローサイトメトリーによりタンパク質レベルで、ない場合にはRT-PCRによりmRNAレベルで解析する。抗原タンパク質の発現自体は正常血液細胞にも見られ白血病特異的でないが、抗体の結合が白血病特異的である場合、抗体は白血病細胞特異的な翻訳後変化により形成される抗原を認識している可能性が高い。単離した数多くの急性骨髄性白血病細胞特異的抗体のうち、そのような性質を持つ抗体/抗原に研究対象を絞り研究を進める。抗体の抗原タンパク質への結合が正常細胞では見られないが、白血病細胞では起きる原因を、構造生物学の専門家との共同研究を準備しており、まさに当初の計画書通りのペースで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上述の抗体Xの抗原Aへの結合に必要なエピトープ領域を同定する。そして、そのエピトープ領域への抗体Xの結合に必要な抗原構造を構造生物学者との共同研究により解析する。さらに、その抗原構造の形成が白血病細胞でのみ生じるメカニズムを明らかにし、その形成に関与する分子を同定する。そして、それらを制御することにより、標的抗原Aの発現を上げたり、発現低下を防ぐことを目指して研究を進める。
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