令和3年度に急性骨髄性白血病細胞特異的抗体の多くについてその認識抗原を同定した。それらの中で、抗原の発現自体は正常血液細胞にも見られ白血病特異的でないが、抗体の結合が白血病特異的である抗体Xに焦点を当てて研究を進めた。抗体Xの抗原Aを認識することは既に明らかにした。興味深いことに抗原Aは正常の単球にも発現しているが、抗体Xは単球には結合しなかった。白血病細胞に比べ正常単球では抗原Aの発現が少ないこと、そして、既存の抗A抗体に比べ、抗体Xのアフィニティーが低いことが、原因の一つであるが、それだけで説明可能かどうかは未だに明らかではない。また、抗原Aは正常の腸管上皮にも発現していることが知られている。そこで、消化器外科との共同研究により、抗体Xが正常ヒト腸管粘膜上皮に結合するかを検討したが、その結合は見られなかった。そこで、抗体Xを元にCAR-T細胞はAML細胞だけを特異的に攻撃すると考えられた。そこで、抗体X由来CAR-T細胞を作製したところ、白血病細胞株のみならず、患者由来AML細胞も認識し、in vitroにおいてサイトカインを産生し、また細胞傷害活性を発揮した。さらに、AML細胞を免疫不全マウスに移植した異種移植モデルにおけるX由来CAR-T細胞の抗腫瘍効果を検討したところ、有意な腫瘍の減少と、マウスの生存期間の延長が見られた。同様の抗腫瘍効果は患者由来AML細胞を用いたPDXモデルでも示され、X由来CAR-T細胞の有用性が示された。
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