白血病幹細胞(LSC)の生成・維持にはミトコンドリア機能が重要とされているが、LSCにおけるミトコンドリア動態、すなわちミトコンドリアダイナミックスがいかに制御されているのかは不明な点が多い。そこで本研究では、ミトコンドリアダイナミックスがLSC制御にいかに関わっているのか、その中でも特にマイトファジーとミトコンドリア融合に焦点をあて、これらの機能異常とLSCバイオロジー・治療反応性との関連について解析した。 2022年度は引き続き、ミトコンドリアダイナミックスがLSC機能をどのように変化させ、また化学療法抵抗性を付与するかどうかを、マウスモデルを用いて解析した。具体的には、MLL融合遺伝子など各種白血病関連遺伝子をレトロウイルスを用いて正常マウス造血幹前駆細胞(HSPC)に発現させてAMLモデルを作成し、これらを用いたミトコンドリア機能解析を行った。またあわせて、ミトコンドリア機能と化学療法抵抗性の関係をFACS、生存解析、継代移植、抗癌剤のin vitro 感受性試験/in vivo 治療モデルなどで明らかにした。さらに、ミトコンドリア状態と化学療法抵抗性との関係、それらの基盤となる分子メカニズムを探るため、上記で作成したAMLモデルから白血病幹細胞を単離し、RNAシーケンスを施行して遺伝子発現の点から解析した。その結果、AMLの薬剤耐性にはミトコンドリアの機能亢進が関わっていることを発見し、さらにその背景にはc-Mycの発現上昇があることを見いだした。
|