研究課題/領域番号 |
20H03715
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
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研究分担者 |
森下 総司 順天堂大学, 医学部, 特任助教 (10635866)
今井 美沙 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50709003)
荒木 真理人 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (80613843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨髄増殖性腫瘍 / 診断マーカー / 小胞体ストレス / 本態性血小板血症 |
研究実績の概要 |
ETU1遺伝子が真に骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者に特異的であるかを確認するため,定量的PCR法を用いて,MPN患者におけるETU1遺伝子の発現量を,反応性血球増加の症例や健常人,他の造血器腫瘍である,慢性骨髄性白血病(CML)と比較した。診断の確定のため,MPN患者は,ドライバー変異であるJAK2,MPL,CALR変異のいずれかを有する症例を対象とした。245例を解析した結果,全てのMPN患者においてETU1遺伝子の高発現を認めた一方で,対照群である反応性症例,CML,健常人では発現していないことがわかった。 MPNには,上述のドライバー変異すべてが陰性の症例(トリプルネガティブMPN)が10~15%程度存在する。そこで,トリプルネガティブMPNの症例20例を集め,ETU遺伝子の発現解析を行なった。その結果,ETU1遺伝子を発現していない集団が存在することがわかった。この集団の中には, 経過観察中に血小板数が正常値まで減少する症例が複数例存在した。これらの症例について,血小板数減少後の骨髄所見を調べてみると,骨髄が正常化していることがわかり,ETU1遺伝子を発現しない症例には自然治癒する可能性のある一群が存在することが明らかとなった。一方,ETU1遺伝子を発現する集団で血小板数が正常化するものは存在しなかった。 続いて,MPN患者末梢血より血小板,リンパ球,顆粒球,白血球を分離し,それぞれにおけるETU1遺伝子の発現を調べたところ,血小板でのみ,発現が見られた。そこで,MPN患者と対照群それぞれの骨髄生検から巨核球を分離してETU1遺伝子の発現を調べたところ,MPN患者の巨核球のみ,ETU1遺伝子の発現を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,ETU1遺伝子の発現がMPN患者に特異的なこと,血球系の細胞では血小板,巨核球に特異的に発現していることを見出した。これは,当初の計画である,ETU1遺伝子の細胞系譜特異的な発現の特定を達成できていることから,概ね計画通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記を踏まえ,当初の計画通り,MPN患者由来の細胞を用いて,ETU1遺伝子の発現が細胞の増殖や分化に与える影響を解析するとともに,マウスモデルを用いた,ETU1遺伝子のノックダウン解析を通じて,ETU1遺伝子の発現がMPN発症へ関与することを明らかにしていく。
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