研究課題
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(以下,MPNと称する)は,造血幹・前駆細胞に体細胞変異が生じ、血球の異常増加や骨髄の線維化を呈する造血器腫瘍である。申請者は、MPNに含まれる疾患群のひとつである本態性血小板血症(以下,ETと称する)の患者血小板に含まれるRNAの網羅的な解析から,当該疾患に特異的に高発現している遺伝子として小胞体ストレス応答に関わる遺伝子のひとつである,CREB3L1を同定した。これまでの検討により,CREB3L1遺伝子の発現はETのみならず,MPN患者の血小板に特異的,かつ共通して見られること,CREB3L1の発現量が血栓症の併発や骨髄線維症への移行と相関することを明らかにし,MPNにおけるCREB3L1発現の臨床的意義を検証してきた。細胞株を用いた検討では,CREB3L1の高発現を再現できなかったため,2022年度では,患者初代細胞を用いて,CREB3L1の高発現がMPNの発症に与える影響を解析した。MPN患者骨髄生検サンプルより磁気ビーズカラムを用いてCD34陽性細胞を分取し,これを適切なサイトカインを用いて分化させ,その経時的な変化をフローサイトメーターにより解析したところ,細胞が分化し,成熟するに応じてCREB3L1の発現量が上昇することがわかった。さらに,CD34陽性細胞において,CREB3L1の発現をRNA干渉法を用いてノックダウンした上で同様の実験を行うと,細胞の分化が停止すること,CREB3L1の発現が細胞の生存に必須であることが明らかとなった。これらの結果は,MPNにおける腫瘍細胞の成熟,増殖にCREB3L1の発現が必要であると考えられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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