研究課題/領域番号 |
20H03731
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲垣 暢也 京都大学, 医学研究科, 教授 (30241954)
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研究分担者 |
原田 範雄 京都大学, 医学研究科, 講師 (50530169)
林 良敬 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80420363)
山根 俊介 京都大学, 医学研究科, 助教 (90582156)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インクレチン分泌 / 腸管内分泌ホルモン |
研究実績の概要 |
マウスのCckプロモーターを活性化して赤色蛍光タンパク質tdTomato(Tomato)を産生するCCKレポーターマウスを作製した。フローサイトメーターによる解析では小腸上部、小腸下部、大腸の上皮細胞におけるTomato陽性細胞の比率は、それぞれ0.95、0.54、0.06%であった。脂肪酸受容体Gpr120、Gpr40、Gpr43、オレオイルエタノールアミド受容体Gpr119は、小腸から単離したTomato陽性細胞で高い発現を示したが、大腸のTomato陽性細胞では発現が見られなかった。グルコースおよびフルクトースの輸送体であるSglt1, Glut2, Glut5は、Tomato陽性細胞と陰性細胞の両方で発現していたが、これらの輸送体のTomato陽性細胞における発現量は、小腸上部から大腸にかけて減少する傾向が見られた。ペプチド輸送体Pept1とペプチド受容体Gpr93はTomato陽性細胞と陰性細胞の両方に発現していたが、カルシウム感知受容体(Casr)は小腸のTomato陽性細胞にのみ発現していた。このような結果からI細胞の数やI細胞での遺伝子発現が、消化管の部位によって異なることが明らかになった(Kato T, et al.J Mol Endocrinol. 2021 )。 GLP-1産生L細胞で高い発現を認める炭酸脱水酵素8 (carbonic anhydrase 8: Car8) に関して、腸管内分泌細胞株STC-1 を用いて、Car8 の発現抑制により長鎖脂肪酸刺激によるGLP-1 分泌が増強、過剰発現により減弱すること、さらにCar8 欠損マウスのコーン油負荷後GLP-1分泌は野生型マウスに比べて有意に高値であることも見出し報告した(Fujiwara et al.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCK産生I細胞可視化マウス(CCK-tdTomatoマウス)を確立し、このマウスを用いてI細胞の腸管内局在に関して得られた知見を既に論文として報告した。またL細胞可視化マウス(Gcg-GFPノックインマウス) の小腸から単離したL細胞の解析により、炭酸脱水酵素8(Car8)がL細胞で発現していることを見出し、Car8が細胞内カルシウム動態の制御を介してGLP-1分泌調節に関与することも報告した。K細胞可視化マウス(GIP-GFPノックインマウス) とL細胞可視化マウスおよび今回新たに作製したI細胞可視化マウスを用いて、それぞれの分泌細胞の位置的関係や重複についての解析に着手している。令和2年度に予定していた計画としてはおおむね順調に進捗しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従って、K細胞、L細胞、I細胞、GIP/CCK共陽性細胞(K/I細胞)およびGLP1/CCK共陽性細胞(L/I細胞) ぞれぞれに特異的に発現する遺伝子を同定し、遺伝子欠損マウスを用いた解析などにより、GIP、GLP-1、CCK分泌機序への関与を明らかにする。また胆汁酸による腸管内分泌ホルモン分泌への影響の検討にも着手する。さらには腸管におけるGPR120シグナルの生理的意義を検討するため、腸管上皮特異的GPR120欠損マウスを作製し、表現型を評価する。各研究者は計画の遂行にあたり必要な技術に熟達しており、研究代表者の統括のもと、相互の連携により組織的に研究を実施する。
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