研究課題
近年、総摂取カロリーを調節する神経回路はかなり明らかとなったが、各種栄養素を摂取する機構は未だに不明である。しかし、ヒトはある種のストレスによって炭水化物を多食する事が知られており(“carbohydrate craving”)、実験動物だけで無くヒトにおいても、ある環境において栄養素を選択的に摂取する機構が働くと考えられる。申請者らは、最近、薬理遺伝学的手法などを用いて、マウス視床下部室傍核CRH (corticotropin-releasing hormone)ニューロンの中にAMPK (AMP-activated protein kinase)制御型CRHニューロンが存在し、このニューロンが炭水化物の摂取を促進することを報告した。また、マウスに社会的敗北ストレスを与えると炭水化物の摂取が増加すること、この作用に同CRHニューロンが必要であることを見出した。本研究では、AMPK制御型CRHニューロンの分子化学的特性を調べるため、CRH -Creマウスと核膜タンパク質に蛍光物質を発現させたマウス(R26-CAG-LSL-Sun1-sfGFP-myc)を掛け合わせ、このマウスからCRHニューロンの核を選択的に単離し、核RNAの全配列を調べた。その結果、HPA軸を制御するCRHニューロン以外にGABAやグルタミン酸を神経伝達物資とすると考えられるクラスターを発見した。この一部のニューロンにはAMPKalpha2を多く発現するニューロンも存在した。このCRHニューロンクラスターは、AMPKによって制御される一連の代謝遺伝子も発現していた。以上のニューロンを解析することによって、炭水化物嗜好性を制御するCRHニューロンの特定に繋がる可能性がある。また、CRH-Creノックインマウスの室傍核CRHニューロンにAAVを用いてGCaMPを発現させ、光ファイバーによっCRHニューロンの細胞内カルシウム濃度の変化をリアルタイムに測定した。結果、味覚刺激や食物の匂いによってこれらのニューロンが大きく変化することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
AMPK制御型CRHニューロンの分子化学的特性を調べるため、CRH -Creマウスと核膜タンパク質に蛍光物質を発現させたマウス(R26-CAG-LSL-Sun1-sfGFP-myc)を掛け合わせ、このマウスからCRHニューロンの核を選択的に単離し、核RNAの全配列を調べたところ、HPA軸を制御するCRHニューロン以外にGABAやグルタミン酸を神経伝達物資とすると考えられるクラスターを発見した。この一部のニューロンにはAMPKalpha2を多く発現するニューロンも存在し、AMPKによって制御される一連の代謝遺伝子も発現していた。これらのニューロンを解析することによって、炭水化物嗜好性を制御するCRHニューロンの特定に繋がる可能性がある。また、CRH-Creノックインマウスの室傍核CRHニューロンにAAVを用いてGCaMPを発現させ、光ファイバーによっCRHニューロンの細胞内カルシウム濃度の変化をリアルタイムに測定した。その結果、味覚刺激や食物の匂いによってこれらのニューロンが大きく変化することを見出した。
核RNAを用いたシングルセル解析を進め、室傍核ニューロンにおけるCRH発現ニューロンの分子化学的特性、及びCRH発現ニューロンのうち、HPA軸とは別のCRHニューロンクラスターの特性を明らかにする。また、CRH-Creノックインマウスの室傍核CRHニューロンにAAVを用いてGCaMPを発現させ、光ファイバーによってCRHニューロンの細胞内カルシウム濃度の変化をリアルタイムに測定し、摂食やストレスによる反応を調べる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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https://www.nips.ac.jp/research/group/post-16/