研究課題
本研究では,大腸上皮を剥離し,小腸上皮オルガノイドに上皮のみを置換することで小腸上皮化した大腸グラフトを創出するという新しい治療戦略の提案を目的とした.昨年度までに,免疫不全マウスの大腸にヒト小腸上皮オルガノイドを移植して構築されたヒト小腸上皮においてSucrase-isomaltaseなどの小腸に特異的なマーカーが発現すること,微絨毛が形成されること,小腸に特有の構造であるLYVE-1陽性の乳び管様構造が大腸組織に誘導されることを示してきた(Sugimoto et al. Nature 2021).本年度,これら小腸上皮および大腸上皮の機能解析を,異種移植したマウス大腸内において継続的に検証した.また,細胞が傷害を修復する過程での大腸における競合的な再生機構に着目し,肛門からの扁平上皮による組織修復と本来の大腸の円柱上皮の競合による上皮の置換メカニズムの一端を解明した(Sugimoto et al. Gastroenterology 2022).本成果は再生領域だけでなく,潰瘍性大腸炎のような大腸上皮が傷害される疾患における潰瘍性大腸炎関連腫瘍の領域性をもった形態形成に関する知見にもつながった.また,絨毛の形成がマウスの直腸部分では未熟である要因として,腸内容物の流れの存在が重要であったことより,昨年度までに,小腸上皮化した大腸をより小腸として機能させるため,手術を併用したラットにおける小腸化大腸の創出と,生存期間の延長という最も大きな機能性のアウトカムを示してきた.今年度は本技術をさらに改良し,生着効率の向上や周術期管理の改善を目指したプロトコール構築を行った.また,本技術の普及のため,学会発表や総説論文発表を行い,成果を報告した.
2: おおむね順調に進展している
本研究では,ヒトおよびラットのオルガノイドを用いた,大腸への小腸オルガノイド移植により,小腸化大腸の創出に成功している.新型コロナウイルス感染症による影響で資材の納入遅延があり,組織解析の予定時期を変更したものの,回収した組織の病理組織学的検討による機能評価を行った.さらなる解析,技術改変をすすめており,研究は順調な進展をみせている.
マウス腸管内で再構築したヒト腸管上皮細胞の解析について,小腸オルガノイド移植の継続とともに,大腸オルガノイド移植による大腸の競合的な再生機構についても検証する.また,上皮置換効率向上の基盤となる上皮の剥離効率の向上を目指して検討を重ねる.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Gastroenterology
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