研究課題
本邦ではがんゲノム医療推進のため、慶應義塾大学病院を含む11施設を「がんゲノム医療中核拠点病院」と定め、癌領域におけるクリニカルシークエンスが保険適応となった。申請者の教室ではDNA情報に加え、RNA情報・エピジェネティック情報等を同一検体から収集して多層データ(オミックスデータ)を構築し、腫瘍の全体像を統合的に捉える次世代型クリニカルシークエンスの構築を開始している。この際にゲノム情報と合わせて、患者の転帰を含めた臨床情報を収集することは、より精度の高いゲノム医療の構築のために最も重要な役割を果たす。我々はゲノム情報と臨床情報を直感的なマウス操作で解析可能なアプリケーションを使用し、クリニカルシークエンスの結果を臨床情報と合わせて、臨床医のみならず、医療従事者全てが得られた臨床情報をゲノム情報と合わせて、容易に解析する環境を構築した。さらに臨床情報・副作用情報をゲノム・遺伝子発現情報と統合解析可能なソフトウェアであるSocratesを開発し、日本IBMの協力を得てIBMクラウド上で走らせることが可能であった。また、臨床データをさらに充実させるため、自然言語処理を用いた診療録の構造化システムの開発と知識データベースの充実化を行った。個別の疾患の全体像を把握するために、自由記載形式で形成された診療録の単語を検索する際は、一つの言葉における多様な表現が検索の精度を低下させてしまうため、これら自由記載における言葉の「ゆらぎ」、すなわち類義語を認識して一つの医学用語に集約・統合することで構造化するシステムの開発を行った。これにより構造化された臨床情報は、前述のゲノム情報と統合されることで、層別化された群ごとの予後と遺伝子変異情報の比較などが実現可能となり、より一層の価値の向上が認められると考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)