研究課題
本研究ではユビキチンリガーゼFbxo22によるヒストン脱メチル化酵素KDM4Bの分解が、KDM4B Ser666残基のリン酸化(pS666)によって抑制されることから、乳癌細胞におけるその意義を解析した。2021年度までの解析で、このリン酸化がAKTに加え、キナーゼXによって生じ、キナーゼXによるリン酸化はKDM4BのDNA損傷応答機能を制御する可能性を明らかにした。2022年度は以下の結果を得た。(1)内因性のKDM4B S666リン酸化を質量分析計およびpS666特異抗体を用いたウェスタンブロットにて同定し、このリン酸化がキナーゼX阻害剤によって抑制されることを確認した。(2)2021年に作成したMCF7細胞に加え、T47D細胞でもCRISPER/Cas9にてKDM4B-KO細胞を作成し、さらにdoxycyclin(Dox)誘導性に野生型(WT)、非リン酸化変異S666A、疑似リン酸化変異S666Dが発現する安定細胞株を作成した。(3)レーザーマイクロ照射によるDNA二本鎖切断部位へのKDM4Bの集積が、S666のキナーゼXによるリン酸化に依存することを上記MCF7、T47DのS666A、S666D変異体と複数のキナーゼX阻害剤にて明らかにした。(4)キナーゼX阻害剤およびKDM4B-KO細胞では放射線照射後のDNA修復(γH2AX 核内fociの消失)が遅延し、S666Dがこれをレスキューすることを上記MCF7およびT47D細胞株で明らかにした。(5)クロマチン分画の免疫沈降/ウェスタンブロットにて内因性のKDM4BとヒストンH3の結合が放射線照射後に著明に亢進し、キナーゼX阻害剤によって完全に阻害されることを確認した。(6)キナーゼX阻害剤が相同組換え修復不全細胞において合成致死効果をもたらすことをDox誘導性にBRCA1あるいはBARD1をノックダウンしたHeLa、MCF7、T47DおよびU2OS細胞で明らかにした。(7)一方、2021年度に作成した乳腺と子宮内膜特異的なFbxo22コンディショナルKOマウスが子宮内膜がんを発症することが明らかとなった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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