研究課題
食道癌切除標本ならびに転移リンパ節から癌特異的ゲノム変異、発現量の異なる遺伝子群および遺伝子制御に関わる領域のエピジェネティックな差異ならびに血漿中のエクソソーム、cell free DNAを同様に解析しその差異を明らかにする。これらについては約10例の解析を進めた。当院ですでに導入しているガーダントヘルスジャパン社のGuardant360によるcell free DNA解析をを進めている。同様に食道癌、胃癌における腸内細菌叢の解析に関しても解析を進めている。胃癌についても同様の検討を進めている。また、食道癌、胃癌とも新たな癌治療法の柱として注目されているimmune checkpointに関与するPD-1, PD-Ll, PD-L2など分子についてもこれまでの血液中のPD-1, PD-Ll, PD-L2など分子の測定を進めている。胃癌培養細胞においてインターフェロンγがPD-L1の発言を増強することを確認した。また、IV期の胃癌患者において健常者に比し血中のPD-L1が高値であることを確認できた。また、胃癌細胞においてアミノ酸を輸送するトランスポーター(LAT-1)を抑制する薬剤(JPH203)によりその増殖能が抑制された。また、血中anti-far-upstream element-binding protein-interacting repressor-lacking exon2 (FIRΔexon2)は胃癌患者において高値を示し、さらに胃癌における全生存率に関与するバイオマーカーであることを明らかにした。食道癌細胞から分泌されたエクソソームにより細胞の遊走能が増強することを確認、報告した。また、高濃度の暴露では細胞周期の抑制、増殖能を抑制する遺伝子群を抑制する一方、アクチン線維の伸張、細胞骨格を変化に関与する遺伝子群の発現増強した。
2: おおむね順調に進展している
これまで食道扁平上皮癌におけるエクソームシーケンスにより、TP53の変異が最多であり80%を超える極めて高い頻度である事を解明し、次いでZNF750に変異が多いことを確認した。化学放射線治療における治療効果を予測する有用なバイオマーカーであり、同時に食道癌治療の有用な予後予測因子であるこのZNF750を中心にリンパ節転移巣における解析、血漿でのcell free DNAでの解析を加えることにより、食道癌リンパ節転移機序の解明ならびにliquid biopsyとしての有用性の検討をは順調に進捗している。癌転移機構におけるエクソソームの果たす役割に着目し、食道癌におけるエクソソームマーカーの1つがCD63であることを明らかにしてきた。食道癌患者血漿では健常群の2倍以上となる例を認め、新たなバイオマーカーとしての有用性を示した。一方、これまで血中microRNAの食道癌における治療効果予測、予後予測因子としての解明を進めてきており、これまで当科で明らかにしてきたmicro RNAとエクソソームの関連について解析を進め、食道癌細胞から分泌されたエクソソームにより細胞の遊走能が増強することを確認、報告した。また、高濃度の暴露では細胞周期の抑制、増殖能を抑制する遺伝子群を抑制する一方、アクチン線維の伸張、細胞骨格を変化に関与する遺伝子群の発現増強することを確認し、報告した。エクソソームと腸内細菌叢が転移において果たす役割の重要性に着目し、癌と宿主の連環におけるその機序の解析を着手した。
化学放射線治療における治療効果を予測する有用なバイオマーカーであり、同時に食道癌治療の有用な予後予測因子であるこのZNF750を中心にリンパ節転移巣における解析、血漿でのcell free DNAでの解析を加えることにより、食道癌リンパ節転移機序の解明ならびにliquid biopsyとしての有用性の検討を継続する。癌転移機構におけるエクソソームの果たす役割に着目し、食道癌におけるエクソソームマーカーの1つがCD63であることを明らかにしてきた。これまで当科で明らかにしてきたmicro RNAとエクソソームの関連について解析を進める。マウスモデルにおけるin vivoでの検討ではエクソソームの血液中を含め全身での挙動評価を可能にしており、このマウスモデルを用いて腫瘍の増殖、進展、転移におけるエクソソームの役割についてさらに検討を進める。エクソソームと腸内細菌叢が転移において果たす役割の重要性に着目し、癌と宿主の連環におけるその機序の解析を進める。その第1歩として食道癌、胃癌患者において次世代シークエンサーにより16S rRNA遺伝子領域を対象とした菌叢構造解析をすすめる。手術治療、化学放射線治療、化学療法前後での腸内細菌叢の変化については症例を重ね、検討を進めていく。
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