研究課題/領域番号 |
20H03749
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松原 久裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20282486)
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研究分担者 |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (00192500)
加野 将之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20456023)
吉村 清 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30346564)
村上 健太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (40436382)
朝長 毅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, 上級研究員 (80227644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食道癌 / 胃癌 / エクソソーム / 腸内細菌叢 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
食道癌切除標本ならびに転移リンパ節から癌特異的ゲノム変異、発現量の異なる遺伝子群および遺伝子制御に関わる領域のエピジェネティックな差異ならびに血漿中のエクソソーム、cell free DNAを同様に解析しその差異を明らかにする。これらについては約10例の解析を進めた。cell free DNA解析を解析を継続的に進めている。同様に食道癌、胃癌における腸内細菌叢の解析に関しても継続して進めている。 胃癌についても同様の検討を進めている。また、食道癌、胃癌とも血液中のPD-1, PD-Ll, PD-L2など分子の測定を進め,食道癌において腫瘍局所の発現と血中の値が相関することを証明し、報告した。 胃癌培養細胞においてインターフェロンγがPD-L1の発言を増強することを確認しており、IV期の胃癌患者において健常者に比し血中のPD-L1が高値であることを確認できた。さらに予後に対する影響に関し検討を進めた。また、胃癌細胞においてアミノ酸を輸送するトランスポーター(LAT-1)を抑制する薬剤(JPH203)によりその増殖能が抑制されており、更なる解析を進めている。また、血中antifar-upstream element-binding protein-interacting repressor-lacking exon2 (FIRΔexon2)は胃癌における全生存率に関与するバイオマーカーであることを明らかにしたが、再発、転移形式との関連を解析を進めている、。 食道癌細胞から分泌されたエクソソームにより細胞の遊走能が増強すること、高濃度の暴露では細胞周期の抑制、増殖能を抑制する遺伝子群を抑制、アクチン線維の伸張、細胞骨格を変化に関与する遺伝子群の発現増強をこれまで確認している。これらの現象がin vivoにおいて癌の増殖、進展にどのように関与しているかに関し検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで食道扁平上皮癌におけるエクソームシーケンスにより、TP53の変異が最多であり80%を超える極めて高い頻度である事を解明し、次いでZNF750に変異が多いことを確認した。詳細な検討を進め、論文として報告した。化学放射線治療における治療効果を予測する有用なバイオマーカーであり、同時に食道癌治療の有用な予後予測因子であるこのZNF750を中心にリンパ節転移巣における解析、血漿でのcell free DNAでの解析を加えることにより、食道癌リンパ節転移機序の解明ならびにliquid biopsyとしての有用性の検討は順調に進捗している。SIRT-1が食道癌予後に関連するマーカーだあることを見いだし、メタ解析の論文として発表した。 癌転移機構におけるエクソソームの果たす役割に着目し、食道癌におけるエクソソームマーカーの1つがCD63であることを明らかにしてきた。食道癌患者血漿では健常群の2倍以上となる例を認め、新たなバイオマーカーとしての有用性を示した。一方、これまで血中microRNAの食道癌における治療効果予測、予後予測因子としての解明を進めてきており、これまで当科で明らかにしてきたmicro RNAとエクソソームの関連について解析を進め、食道癌細胞から分泌されたエクソソームにより細胞の遊走能が増強することを確認、報告した。また、高濃度の暴露では細胞周期の抑制、増殖能を抑制する遺伝子群を抑制する一方、アクチン線維の伸張、細胞骨格を変化に関与する遺伝子群の発現増強することを確認し、報告した。 エクソソームと腸内細菌叢が転移において果たす役割の重要性に着目し、癌と宿主の連環におけるその機序の解析をに関し、食道癌患者の腸内細菌叢の解析症例を増やし、順調にこれらの検討を進めている。これまで得られたこれらの結果に関して多くの学会、研究会で報告を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
化学放射線治療における治療効果を予測する有用なバイオマーカーであり、同時に食道癌治療の有用な予後予測因子であるこのZNF750を中心にリンパ節転移巣における解析、血漿でのcell free DNAでの解析を加えることにより、食道癌リンパ節転移機序の解明ならびにliquid biopsyとしての有用性の検討を継続する。メタ解析の論文で報告したSIRT-1に関しても詳細な検討を進める。 癌転移機構におけるエクソソームの果たす役割に着目し、食道癌におけるエクソソームマーカーの1つがCD63であることを明らかにしてきた。これまで当科で明らかにしてきたmicro RNAとエクソソームの関連について解析を進める。マウスモデルにおけるin vivoでの検討ではエクソソームの血液中を含め全身での挙動評価を可能にしており、このマウスモデルを用いて腫瘍の増殖、進展、転移におけるエクソソームの役割について継続して検討を進める。 エクソソームと腸内細菌叢が転移において果たす役割の重要性に着目し、癌と宿主の連環におけるその機序の解析を進める。その第1歩として食道癌、胃癌患者において次世代シークエンサーにより16S rRNA遺伝子領域を対象とした菌叢構造解析を開始したがさらに症例を重ね解析を進める。手術治療、化学放射線治療、化学療法前後での腸内細菌叢の変化についても同様に症例を重ね、更なる検討を進める。
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