研究課題/領域番号 |
20H03750
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神田 光郎 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (00644668)
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研究分担者 |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
横島 聡 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (10376593)
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50589786)
清水 大 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50723037)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃癌 / 分子標的治療薬 / がん抗体医薬 / CHRNB2 / コンパニオン診断 |
研究実績の概要 |
切除不能・再発胃癌は依然として予後不良であり、治療成績改善のためには「転移」を制御しうる、新しい作用機序の薬剤開発が求められている。本研究では、実際に転移をきたした症例から得た組織検体を用いた網羅的発現解析を切り口に同定した標的分子cholinergic receptor nicotinic beta 2 subunit (CHRNB2)を狙い撃つ分子標的治療薬開発を目指している。ゲノム編集技術を応用したCHRNB2安定的ノックアウトによりアポトーシス誘導を介した胃癌細胞増殖能低下を起こすことが明らかになった。一方、低発現胃癌細胞株にウイルスベクターによってCHRNB2を強制発現させることにより細胞増殖能は亢進した。ゲノム編集により作成したChrnb2欠損マウスでは、生殖・発生・臓器機能・認知行動機能に異常を認めなかった。ハイブリドーマを樹立して取得したマウスCHRNB2モノクローナル抗体は、単独で中等度の細胞増殖抑制能を示した。蛍光細胞染色を行うと、このモノクローナル抗体はがん細胞の膜上に発現するCHRNB2タンパクおよび、293細胞に強制発現させたCHRNB2タンパクに特異的結合していることが示された。細胞内signalの発現およびリン酸化を調査すると、上皮間葉移行を通じて癌細胞の転移に関与するZEB2およびJAK-STATシグナルのSTAT3、PI3K-Aktの発現もしくはリン酸化にCHRNB2が干渉することが示唆された。蛍光細胞染色結果からCHRNB2は抗体付加後の内在化が示されており、抗体-薬物複合体合成を進めている。試作品としてモノクローナル抗体と天然化合物lomaiviticin類の抗体・化合物複合体を合成した。マウスモノクローナル抗体のアフィニティ解析と、ヒト化抗CHRNB2抗体合成に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
lomaiviticin類と抗CHRNB2モノクローナル抗体を用いた抗体・化合物複合体を合成したが、安定的にin vitro活性を示す複合体を取得するのに難渋しており、若干の計画遅延をきたしている。各種条件設定を試しており、この点が解決すれば研究期間内に計画を完遂できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CHRNB2モノクローナル抗体単体のin vivoにおける癌細胞転移抑制効果を評価するため、マウス腹膜播種モデルに対する腹腔内投与の効果を調べる。モノクローナル抗体のヒト化を進めるとともに、アフィニティ測定とエピトープマッピングを実施する。モノクローナル抗体とlomaiviticin、リンカー (SMCC) を用いて複合体を合成し、安定的な合成確認を経て、in vitroついでin vivoでの活性を評価する。特に、モノクローナル抗体単体からの上乗せ効果に着目する。 CHRN family遺伝子の発現とCHRNB2発現がどの程度、交互作用を有しているかを調べるため、胃がん細胞株およびヒト胃組織検体におけるCHRNA2-6、CHRNB6発現を評価して相関解析を行う。また、これらに対するCHRNB2の後天的発現阻害による変化についても調べる。 胃組織検体を対象として、CHRNB2のmRNAおよびタンパク発現を調べ、特に再発転移発生との関連性を調査する。特に、汎用性の高い免疫組織化学染色法はコンパニオン診断法確立に重要と考えている。
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