研究実績の概要 |
ラットを用いてDCD heartと同様な温阻血障害心(25分間)をつくり、摘出前と環流液中にIL-11を投与した群と非投与群で虚血再灌流障害の程度を比較検討した。ランゲンドルフ環流装置を用いた血行力学的分析においては、60分間の環流中すべての時点において、LV developed pressure, max dP/dT, min dP/dTといった指標はIL-11投与群で良好であり、IL-11 post conditioningによる心機能改善効果を認めた。しかし、心筋バイオマーカー(AST, LDH, CK-MB, lactate)では有意差は認めず、また組織病理学的分析においてもDHE染色によるoxidative stress, TUNEL染色による心筋細胞アポトーシスの兆候を示さなかった。電子顕微鏡分析では、非投与群において心筋ミトコンドリアの膨化、そのマトリックスのdisruptionが多く観察された。これらの傷害ミトコンドリアは、IL-11投与群において有意に減少が認められた。培養心筋を用いたImmunoblot analysisではIL-11培養液中投与によりSer727におけるSTA3のリン酸化が確認された。以上からDCD heartと同様の温阻血障害を設定した心臓において、IL-11のpost conditioningがcardioprotectiveに働くことが示され、その機序はこれまでにIL-11の効果として示されてきた、抗アポトーシス作用やoxidative stressの軽減作用以外に、近年報告されているser727でリン酸化されたSTAT3がミトコンドリア内でmitochondrial permeability transition poreの開放を制限しCa overloadを防止するといった機序により、その効果を発揮している可能性が示唆された。
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