研究課題/領域番号 |
20H03765
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸田 宏一 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (40379235)
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研究分担者 |
塚田 敬義 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30257894)
福嶌 教偉 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (30263247)
吉川 泰司 鳥取大学, 医学部, 講師 (40570594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心停止ドナー / 心臓移植 / ECMO |
研究実績の概要 |
2020年度は家畜ブタ(体重約60kg)を用いて脳死モデル作成を試みた。小穿頭しバルーンカテーテルを挿入、バルーンを拡張させることで脳ヘルニアおよび脳幹圧迫を惹起させ脳死モデルを作製することに成功した。その後、低酸素により心停止とした後、0分、5分、15分、30分、60分と温阻血時間をおき、体外式膜型人工肺(ExtraCorporeal Membrane Oxygenation: ECMO)により全身臓器灌流を再開させると同時に開胸し心臓の摘出に移った。各1頭ずつの検討ではあるが、0分、5分、15分、30分では再灌流開始後に自己心拍再開が確認できたが、温阻血時間60分では自己心拍の再開は確認できなかった。追試を要するものの、60kg級の家畜ブタにおける温阻血許容時間は概ね30分未満と考えられる。その後摘出した心臓は切片を切り出し、病理学的に評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大による新規実験の申請・開始の遅れがあったものの、脳死モデルが予想外よりも順調に作成できた。また、心停止後の温阻血時間を0分、5分、15分、30分、60分で各1頭ずつ検討したところ、30分未満ではECMOによる全身臓器灌流再開後、酸塩基平衡や電解質を補正することなく、心拍が再開することが分かった。2021年度には酸塩基平衡や電解質の計測機器も導入できる見通しであり、より厳密なデータの測定と管理が可能となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ブタ(体重約60kg)を用いた心停止ドナーからの臓器摘出モデルの作製および心臓移植手術の際、十分な深麻酔とし苦痛への配慮を行う。ドナー動物は鎮痛・鎮静した上で耳静脈でライン確保し、吸入麻酔で十分な抑制状態を確認後、気管挿管して十分な深麻酔を維持する。全身麻酔中は3点式心電図でモニターし、体温調整のため恒温手術台上で手術する。両側頸部および鼠径部、前胸部を剃毛し、仰臥位とする。左(もしくは右)の頸動脈と大腿動静脈にシースを挿入、頸動脈からカテーテルを挿入しPV loopを描く。 その後伏臥位とし、脳死モデルを作成する。前治療としてヘパリン等を投与し、人工呼吸器を停止して、心停止とする。心停止後、 ドナー動物を放置し温阻血とした後に、大腿部を剃毛・消毒し、大腿動静脈に送脱血管を挿入し、ECMOを用いて全身臓器を灌流する。ドナー動物は、心停止後の温阻血時間による臓器障害についても引き続き検討する。 ドナー動物の前胸部を剃毛・消毒し、ECMO開始後に胸骨正中切開で開胸し心臓に到達する。続いて、ECMO回路から心筋保護液を投与するとともに全身を冷却する。 心移植の際はドナー動物から心臓を型どおり摘出し、保存液に浸漬し氷冷する。ドナー心をレシピエント動物へ型通り移植し、再還流直前にメチルプレドニゾロンを静脈投与する。レシピエント動物は、麻酔覚醒、抜管後は自由な運動を妨げるものは一切なくし、ケージ内で飲水・摂食等の制限なく、清潔・安静を保って飼育する。術後約3日間は、抗菌薬と鎮痛剤を投与する。術後の免疫抑制剤は、メチルプレドニゾロンとシクロスポリンを用いる。実験期間中に実験動物に異常が生じた場合、可能な限り苦痛を伴わないよう迅速に処置を施行する。本年度は上記の実験を行い、移植後の経過観察までを予定している。
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