研究課題/領域番号 |
20H03770
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
毛受 暁史 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30527081)
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研究分担者 |
佐藤 篤靖 京都大学, 医学研究科, 助教 (30706677)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺癌 / p53 / 上皮間葉転換 / 浸潤転移能 / 薬剤耐性 / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
我々は、肺癌において、最も高頻度に観察されるp53遺伝子変異に伴う上皮間葉転換(EMT)亢進による癌悪性化の研究およびその治療戦略の開発を目的とした研究を行っている。 2020年度、機能亢進型や機能抑制型など様々なタイプの変異型p53ベクターの作成を行い、現在まで合計9種類のHotspot変異型p53ベクターを作成した。それらのベクターによる肺癌細胞株への遺伝子導入を行い、その表現型の変化を観察中である。これらにより、全p53変異の多数を占める変異型について、EMTとの関連について解析することが可能となった。EGFR変異やKras変異を有する肺癌細胞株を用いて、ドライバー遺伝子変異とのシグナル関連についても解析予定である。 次にluciferaseを利用したpromoter reporter assayによるhigh through-put screeningの系を立ち上げ、その有用性を検証した。この系により、EMTを起こす様々な細胞株やメカニズムについてdrug screeningを行うことが可能となり、応用範囲が広がることが良そうされる。 また、これらの知見や関連して検索した論文に基づき、肺癌における上皮間葉転換に関する総説をGeneral Thoracic and Cardiovascular Surgeryに発表した(DOI: 10.1007/s11748-021-01595-4)。総説では、主に肺癌に関する実験結果に基づいたEMTに関する論文を引用し、特に肺癌におけるEMTの重要性やそのシグナル経路を解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
や浸潤転移能、薬剤耐性などの観点から解析する予定である。その材料となる遺伝子導入ベクターの作成に成功したため、今後は遺伝子導入およびそのシグナルの網羅的解析を行う過程にある。すでに、先行して作成可能であった特定のHotspot変異p53を導入した細胞内シグナルの一部の解析により、EMT関連転写因子亢進を確認している。細胞株の汚染による研究停滞が心配されたが、汚染除去も終了し、研究を再度、軌道に載せることができた。 A549肺癌細胞株のTGFβ添加によるEMTを阻害する物質のdrug screeningを前述のHTSの系を用いて行い、約2400種類の既存薬剤、compoundから7種類の薬剤でE-cadherinの発現亢進、vimentinの発現抑制を確認している。これらの薬剤によるphenotypeの変化について、現在、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度については、様々なp53変異導入肺癌細胞株について、EMT亢進との関連を確認する。EMT亢進が確認された変異について、RNAseqやLC/MSによる遺伝子タンパクの網羅的解析を行い、その特徴を明らかにする。 またこれらの細胞株についてin vivoにおける浸潤転移能についても、解析を行う。 TGFβ添加によるEMTに加えて、p53遺伝子変異導入によるEMTにおいても、その回復を促進する薬剤screeningを行う。Drug screening setを増やして、さらに薬剤selectionを行い、ヒトへの応用可能性を探索する予定である。 また後半には、肺癌発生transgenic mouse model(EGFR、Krasなど)とp53変異mouse modelを掛け合わせて、p53変異を有する肺癌発生mouse modelを作成開始する。
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