研究課題/領域番号 |
20H03771
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
冨田 秀太 岡山大学, 大学病院, 准教授 (10372111)
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研究分担者 |
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30397880)
大橋 圭明 岡山大学, 大学病院, 研究准教授 (60729193)
山本 寛斉 岡山大学, 大学病院, 講師 (40467733)
諏澤 憲 岡山大学, 大学病院, 助教 (90839713)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺癌 / ドライバー遺伝子変異 / ドラッグリポジショニング / 耐性獲得メカニズム / 併用療法 / EGFR |
研究実績の概要 |
研究の目的は、治療抵抗性・ドライバー遺伝子変異陽性肺がんが依存するパスウェイを狙い撃ちする次世代精密医療の基盤を築くことにある。具体的には、治療抵抗性症例において遺伝子発現レベルで活性化しているパスウェイを抽出し、ドライバー遺伝子変異の抑制とシナジー効果の高い標的パスウェイをドラッグリポジショニング解析などのin silico解析を駆使して評価することにより、治療抵抗性を示すドライバー遺伝子変異陽性の肺がん症例が依存するパスウェイを狙い撃ちする次世代精密医療を検討する。今年度はドライバー遺伝子変異としてMET遺伝子増幅を有するEBC1肺がん細胞株を用いて、MET阻害剤(クリゾチニブ)の耐性メカニズムを解明した。クリゾチニブ耐性株(CRS株)を取得し、網羅的な遺伝子発現プロファイル解析の結果、異なるドライバー遺伝子Xの発現亢進を確認した。このドライバー遺伝子Xに対する阻害剤を用いた併用療法により効果的な増殖抑制効果を認めた。また異なる方法で取得したクリゾチニブ耐性株(CRH株)では、遺伝子Yの発現亢進を確認した。遺伝子Yを標的としたshRNAによる遺伝子発現の抑制とクリゾチニブを併用したところ、より効果的な増殖抑制効果を認めた。これらの結果は、クリゾチニブ耐性獲得肺がんに対する効果的な併用療法の可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はドライバー遺伝子変異としてMET遺伝子増幅を有するEBC1肺がん細胞株を用いて、MET阻害剤(クリゾチニブ)の耐性メカニズムを解明した。クリゾチニブ低濃度暴露から開始し、徐々に濃度を上げるステップワイズ法により、クリゾチニブ耐性株(CRS)を取得した。網羅的な遺伝子発現プロファイル解析の結果、異なるドライバー遺伝子Xの発現亢進を確認した。ゲノムDNAを用いた解析から、遺伝子Xの増幅を確認するとともに、遺伝子変異を確認した。またこの遺伝子変異から予想されるリン酸化シグナルの増強も確認している。このCRS耐性株に対して、ドライバー遺伝子Xに対する阻害剤とクリゾチニブを併用したところ、より効果的な増殖抑制効果を認めた。一方、高濃度のクリゾチニブに長期間暴露することでクリゾチニブ耐性株(CRH)を得ることができた。網羅的な遺伝子発現プロファイル解析の結果、遺伝子Yの発現亢進を確認した。そこでCRH耐性株に対して、遺伝子Yを標的としたshRNAによる遺伝子発現の抑制とクリゾチニブを併用したところ、より効果的な増殖抑制効果を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
ドライバー遺伝子陽性肺がんモデルマウスを用いた解析を検討する。現在までに、CCLEの網羅的な遺伝子発現データを用いたドラッグリポジショニングや、EGFRドライバー遺伝子変異陽性細胞株およびMETドライバー遺伝子変異陽性細胞株の耐性獲得メカニズムと併用療法の開発を実施してきた。これらの結果をもとに、ドライバー遺伝子陽性肺がんモデルマウスを用いたin vivo解析を実施し、耐性獲得メカニズムを時系列で解析するとともに、生体内での併用効果を評価する。また引き続き、低接着性のハニカム構造のプレートを用いた三次元(3D)様培養環境による生体環境を模倣した網羅的な遺伝子発現データを解析対象とした、ドラッグリポジショニング解析を実施し、モデルマウスから得られたデータと統合的に解析することで、耐性獲得メカニズムマスターレギュレーターとなる新規治療標的の探索や、より高い治療効果が得られる併用療法の組み合わせの最適化を検討する。
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