研究実績の概要 |
昨年度に続いて肺癌オルガノイド(LCO)の詳しい解析、凍結条件の検討等を行った。 オルガノイドの樹立成功率は扁平上皮癌で有意に低く、また腺癌の中では肺胞置換性増殖型で低かった。また、長期培養(10継代以上)されたLCOは10例であった。長期培養樹立症例は全生存期間およびがん特異的生存期間が短縮する傾向にあった。 11個のLTOとそれに対応する9個の切除検体において、両者の遺伝子異常の一致度を評価したところ、7つの遺伝子変異(EGFRx3, Tp53x1, RETx1, PTENx1, CTNNB1x1)が、LCOおよび親腫瘍の両方で検出された。他の4つの変異は、LTOまたは親腫瘍のいずれかで検出され一致していなかった。 EGFR遺伝子のエクソン20挿入H773delinsYNPYを有するLTOが由来した患者は、肺癌が再発しており化学療法不耐となっていた。EGFRエクソン20変異は一般にEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に抵抗性であるが。この細胞のEGFR-TKIの感受性を検討したところ、オシメルチニブのIC50は24nM, 20nMであり、承認容量で到達可能と考えられた。十分な説明と同意の上、この患者にオシメルチニブを使用したところ、血清CEAが低下すると共に、転移巣の縮小を認めた。 昨年度の検討において、凍結・融解試験において一度ー80℃に保存した検体のうち15例を再培養したものの、良好に発育したのは5例のみであった。そこで、凍結保存条件の検討を行った。保存液(CELLBANKERまたはSTEM-CELLBANKER)、緩速(BICELL)凍結の有無、保存温度(-80℃と-196℃)で場合分けをし、最適な凍結方法を探索した。その結果、半年後のviabilityは保存液に関わらず、緩速凍結を行った上で-196℃保存することが重要であると考えられた。
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