研究課題/領域番号 |
20H03779
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 孝明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20375794)
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研究分担者 |
関根 章博 千葉大学, 予防医学センター, 教授 (30425631)
島田 忠長 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40436423)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 敗血症 / 遺伝子多型 / ゲノム / 網羅解析 |
研究実績の概要 |
本研究チームは、千葉大学医学部の生命倫理審査委員会での承認が得られた後から平成31年3月まで、国内の複数施設に協力を得て、大規模な日本人敗血症コホート(約 800症例)を作成し、敗血症GWASを目的とした血液検体・詳細な患者臨床データの収集をおこなってきた。そして令和元年度より、収集した敗血症患者の全血中の白血球よりgenomic DNAを抽出し、そのDNAをSNPアレイ(Illumina Infinium Omni2.5 Exome-8)を用いて250万箇所のゲノムワイドSNPsのgenotypingを行なった。令和2年度、このゲノムワイドSNPs のgenotyping raw dataに関し最終的なGWAS解析の準備の解析を行い、GWAS解析用SNPsデータセットを最終化した。またGWAS解析用の臨床データに関してもmissing dataの再確認などを行い、臨床データセットの最終化し、GWAS解析準備を完了した。令和3年度、これらの網羅的なSNPs genotypingデータを用い、死亡をoutcomeとしたGWAS解析を行った。GWAS解析結果では、マンハッタンプロットで複数のピークを認め、敗血症の死亡転帰に関連する複数の遺伝子座を検出した。これまで敗血症に関して本研究と同規模のGWAS報告は数報しかない。敗血症GWASの既報に加え、炎症性疾患や感染疾患に関するGWASの中で、今回検出された遺伝子座に関する既報があるか否かなど既報に関する調査し、今回の研究成果の妥当性と新規性の確認作業を行なった。そして、これらの作業と平行して、本敗血症GWAS研究成果の論文作成(方法と主たる結果の図表の固定)に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画通り、これまで長期間かけて収集してきた大規模な日本人敗血症コホート(約 800症例)の遺伝子データと臨床データを用いたGWAS解析を行なった。GWAS解析は、より良い解析手法が経時的に更新され、最新の解析手法を確実に実施しているかどうかが査読者らに重視され、研究成果報告の受理を左右する重要なポイントになっている。そこで先進的な手法を確実に実施できる外部機関を選定し、支援を得て、質の高いGWAS解析が実施した。この部分は、本年度の研究進捗に重要な部分であると考えてしっかりと取り組んできた部分であり、計画通り順調に研究進捗が展開できた理由としてあげられる。また計画通り、敗血症のアウトカムの中で、最も重要なアウトカムである死亡をアウトカムに選択し、死亡に関する敗血症GWASを実施し、マンハッタンプロットで複数のピークを認め関連する可能性のある複数の遺伝子座を複数検出した。この研究結果が得られた部分も、計画通り、研究が実施でき、そして順調に研究が順調に展開していることを示すと考えられる。敗血症GWASはこれまで報告数は極めて少なく、本研究の希少性を示す部分であるが、一方で、既報との比較は少なくなる、そのため広い領域のGWASの研究成果との比較が重要である。そこで敗血症GWASにとどまらない広い疾患・病態を対象としたGWASの既報の調査を計画通り、実施できた。また本研究の成果がどのような位置づけとなるかを確認し、論文作成に着手した。これらより、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降の方針に関しては、本研究でこれまでに得られた日本人敗血症GWASの死亡と関連する遺伝子座の結果が、他の敗血症コホートでも認められるかどうかを検証することが一つの重要なポイントである。そこで、研究代表者が留学していたカナダ ブリティッシュコロンビア大学の敗血症GWAS研究チームとの連携を推進する。具体的にはブリティッシュコロンビア大学の敗血症GWAS研究チームが収集したカナダ敗血症GWASコホートを用いて、日本人敗血症GWASで得られた遺伝子座が同様にカナダ敗血症GWASコホートでも死亡と関連するかどうか検証を行う。また同研究チーム以外にも国際的には敗血症GWASチームが存在し、互いに研究を共同して推進することが重要であることを認識し、これまでにコミュニケーションが度々取られてきている。そこで共同研究することで発展できる敗血症GWASチームがないか再度探索し、より広い検証作業の展開を目指す。またもう一つの方策は、細胞を用いて敗血症を模した基礎実験で得られた研究成果との融合である。国際的遺伝子多型プロジェクト(HapMapプロジェクト)で採取されたlymphocyteをEB virusで不死化したlymphoblastoid cellsを用い、敗血症刺激を模したcytokine mixture(TNFα,IL-1β, IFN-gamma, CpG)で細胞を刺激し、刺激24h後の細胞培養液中の蛋白レベル(IL-6)を測定し,大規模データ解析用のweb-based platform (Galaxy)と遺伝子解析ソフト(PLINK)を利用し得たeQTL解析結果を本研究代表者は得ており、このeQTL解析結果とGWASデータと統合し、さらなる研究成果を得られることを追求する方針である。
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