研究課題
本研究の目的は、敗血症患者における腸内細菌叢変化と上皮細胞への影響及び全身免疫能、ひいては患者予後などの臨床情報との関連性を評価し、腸管を標的とした敗血症の病態解明と治療介入の可能性を探ることである。広島大学病院高度救命救急センター・ICUに入室した敗血症患者を対象として,敗血症患者の詳細な臨床情報(敗血症の原因疾患、既往疾患,重症度スコア、使用薬剤,血液マーカー,治療介入や生存期間など)をデータシートに集積した。敗血症患者における腸管の細菌叢の変化と、①末梢血単核細胞の免疫に関与する遺伝子解析、②腸管透過性のマーカーなど血中の代謝物、③患者の臨床情報、との関連を明らかにするために、糞便、血液検体の採取を行い、検体を医薬基盤・健康・影響研究所に送付、保管した。敗血症のマウスモデルとして盲腸結紮穿刺モデルを確立した。他臓器障害への影響を評価するために、神経炎症のバイオマーカとされる18 kDa-translocator protein(TSPO)に着目して、臓器機能障害を評価する実験系を確立した。リポポリサッカライド(LPS)投与による急性の全身炎症モデルの予備的研究において、TSPOが中枢神経においてミクログリアの活性化を反映すること、その阻害が急性期の神経炎症や行動障害の緩和に有効な可能性を示した。TSPOは脳だけでなく、全身のミトコンドリアに存在し、炎症や酸化ストレス、免疫能に関与している可能性がある。予備実験では、TSPO ノックアウトマウスで肝臓の炎症性サイトカインの発現量が有意に高いこと、脾臓重量が有意に大きいことなど、TSPOと炎症の関連性が示唆された。現在、中枢神経、腸管、肝臓、腎臓など他臓器におけるTSPOの動態と敗血症時の消化管機能障害との関連性を検討する実験系の確立を試みている。
3: やや遅れている
COVID-19患者の爆発的増大に伴い、診療患者の変化、面会制限、研究者診療エフォートの増大、テレワーク推進により、臨床患者検体の採取が困難となっている。
まずは動物実験モデルを主体として、敗血症モデルの確立と臓器障害に標的をおいた研究に主眼を置いてすすめる。敗血症患者検体は,より長いスパンで検体採取を継続して試みる。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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