研究課題/領域番号 |
20H03786
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
巽 英介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, オープンイノベーションセンター, 副オープンイノベーションセンター長 (00216996)
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研究分担者 |
西中 知博 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00256570)
福嶌 教偉 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (30263247)
水野 敏秀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40426515)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経皮的心肺補助 / ECMO / 循環不全 / 呼吸不全 / 救急医療 |
研究実績の概要 |
重症循環・呼吸不全患者に対する救命手段の一つとして施行される経皮的心肺補助システムを用いた治療における臨床的課題に関する解決方法の開発として、小児患者における経皮的心肺補助法の適応拡大と臨床成績向上を実現するための小児用ECMOシステム開発を行っている。小児用ECMOシステムは、ポリメチルペンテン中空糸膜による小型化小児用人工肺、低充填血液量かつ動圧浮上によって非接触回転駆動を可能とする遠心血液ポンプ、抗血栓性コーティング、および、人工肺出口と血液ポンプ入口近傍にシャント回路を設置し、回路を通過する血液の一部を再循環させるシャント回路増設法を含む回路構成とした。シャント回路増設法においては、ECMO回路の物理的寸法は、管路抵抗並びにシャント回路と患者側主回路の流量分配比を決める要因となる。一方、流量分配比はカニューレを含むECMO回路の抵抗並びに患者の血行動態による患者側主回路の抵抗変動によっても影響を受ける。このため、患者血行動態から血管抵抗を推定し、これとECMO回路の圧力特性をもとにダイヤグラムを作成し、これを用いて、シャント回路における血流量および圧力の変化を予測してシャント回路増設法を設計した。これによって、小児用ECMOシステムの血液循環の安定、血栓形成抑制、および必要とするガス交換の確保を目指した。さらに、ECMO回路を、監視システム一体型ドライブユニット中に組み込んだシステムとして、超小型で搬送性と安全性を高めることを目指した。製作した小児用ECMOシステムを用いて慢性動物実験(ヤギ)を実施した結果、14日間の連続駆動を達成した。本ECMOシステムの有効性、安全性、各種課題について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経皮的心肺補助システムの臨床的課題解決に向けた研究開発を推進している。小児重症循環・呼吸不全患者に対する経皮的心肺補助法の適応拡大と臨床成績向上を実現するための小児用ECMOシステムの開発を目標に、ポリメチルペンテン中空糸膜による小型化小児用人工肺、低充填血液量かつ動圧浮上によって非接触回転駆動を可能とする遠心血液ポンプ、抗血栓性コーティング、およびシャント回路増設法によって構成される小児用ECMO回路を製作した。さらに、ECMO回路を、監視システム一体型ドライブユニット中に組み込んだシステムとした。本システムの有効性、安全性、各種課題について検討を実施する段階に到達している。
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今後の研究の推進方策 |
重症循環・呼吸不全患者に対する救命手段の一つとして施行される経皮的心肺補助システムを用いた治療における臨床的課題と解決方法の研究を行う。臨床的課題に関する研究開発として、小児重症循環・呼吸不全患者における経皮的心肺補助システムを用いた治療の適応拡大と臨床成績向上を実現するための小児用ECMOシステム開発を継続する。小型化小児用人工肺、遠心血液ポンプ、抗血栓性コーティング、シャント回路増設法を主要構成要素として、コンパクトにオールインワン化されたECMO回路を、監視システム一体型ドライブユニット中に組み込み、医学的・工学的両側面から検討を行い、小児用ECMOシステムの開発を進める。また、救命救急現場におけるECMO導入と治療開始およびその後の患者緊急搬送を可能とするシステム開発を推進する。
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