研究実績の概要 |
我々の基盤研究(Aoki, Natsume, Nat Genet, 2015. Neuro-Oncol 2018)などにより脳腫瘍、特に神経膠腫のゲノム異常が明らかになりつつある。神経膠腫の8割はIDH変異が腫瘍発生に関与し、乏突起膠腫系と星細胞腫系の系譜に分かれ、それぞれ特有の遺伝子変化を獲得しながら、時間空間的に指向性を持って悪性転化・進展する(腫瘍進化的トラジェクション)。また神経膠腫の残り2割はEZH2によるヒストンメチル化が腫瘍発生の契機となる(Ohka, Natsume, Cancer Res, 2019)。予後改善には腫瘍発生から診断から悪性転化から腫瘍死という時間軸のなかで悪性転化を抑制・遅延することが鍵となる。しかしIDH1変異、EZH2過剰発現後、悪性転化に向かう時間空間的な指向は依然不明である。これまでは腫瘍塊からエクソン、RNA、DNAメチル化、全ゲノム、ヒストン修飾を次世代シークエンスして知見を得てきた。そして今後は単一細胞解析が主流となると考えられるが不均一細胞群の個々の標識などに障壁がある。本研究では、単一細胞をDNAバーコードラベルし、20,000種類の単一遺伝子をCRISPR/Cas9ノックアウトするという我々が樹立した新規アプローチで、腫瘍進化的トラジェクションを明らかにすることができた。これにより、次世代個別化医療を目指す基盤ができた。
|