研究課題/領域番号 |
20H03791
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
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研究分担者 |
吾郷 哲朗 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30514202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 組織修復 / 神経機能回復 / ペリサイト / マクロファージ |
研究実績の概要 |
これまで梗塞内細小血管内皮周囲に再分布するペリサイトによって梗塞内血流回復,マクロファージ局所動員がもたらされ,組織修復・機能回復が促進する可能性を報告してきた.梗塞内ペリサイトの生存・再動員には、早期再灌流が最も有効な方法であるが、加えてsGLT2阻害薬(Takashima, Commun Biol 2022)やフェロトーシス阻害薬(in submission)の投与が有効である可能性を報告した。マウス中大脳動脈永久閉塞・脳梗塞モデル(pMCAO)に,クロドロネート・リポソームを投与してマクロファージの局所動員を抑制すると,亜急性期以降の組織修復・機能回復が不良となることを確認した.マクロファージ機能を制御しうる内因性因子として活性酸素産生酵素Nox4を同定した.Nox4は加齢により発現が増加するが、Nox4ノックアウトマウス(Nox4KO)から単離したマクロファージはミエリンデブリス貪食能が亢進していた.Cuprizone投与による脱髄モデルでは,野生型マウスに比しNox4KOマウスで脱髄の修復(クリアランス)が速やかに生じ,再髄鞘化および機能回復が良好となることを報告した(Yamanaka et al. GLIA 2023).Nox4はミトコンドリアにおけるUcp2発現を抑制し,エネルギー産生や貪食能を抑制すると考えられた.一方,Nox4KOにおいてpMCAOを行うと,予想に反し亜急性期以降の組織修復や機能回復が抑制された.異なる脳傷害モデルでNox4発現の是非が異なる可能性が示唆され、その理由について精査を進めている。IL33-ST2系の傷害組織における線維化応答への関与が示唆されているが、IL33は梗塞周囲グリア、ST2は梗塞周囲のペリサイトに発現することを見出しており、IL33-ST2系が組織修復・機能回復に寄与する可能性について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JCBFM, GLIA, Commun Biol誌などの英文誌に成果を継続的に報告できており、研究は概ね順調に進んでいるといえる。引き続き、脳傷害後の組織修復・機能回復の立場から,ペリサイトとマクロファージの相互作用の重要性に着目し研究を継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
内因性脳梗塞機能回復に際して、マクロファージによる梗塞内デブリス除去は絶対不可欠なステップと考える。しかし、我々の成果によると、Nox4KOマウスではマクロファージ機能が亢進するにもかかわらず、機能回復が不良となる可能性が示唆されている。Nox4KOでは梗塞内内皮細胞周囲へのペリサイト動員障害、血流回復障害が生じている可能性があり、機能亢進したマクロファージの局所浸潤を困難にしている可能性がある。マクロファージ局所浸潤の前提条件としてペリサイト再動員が不可欠であること、この過程にNox4が重要な役割を示すことを明確にしたい。一方クロドロネートによりマクロファージ機能抑制をかけたマウスではやはり機能回復が抑制されることを示している。我々は浸潤マクロファージによって梗塞内ペリサイトの局所動員自体や細胞外マトリックス産生能が増強される可能性があると考えており、クロドロネート投与マウスを用いて梗塞内ペリサイトの応答について詳細に検討する。IL33-ST2系が梗塞内内皮細胞周囲へのペリサイトの動員およびその後の組織修復に重要な役割を果たしている可能性を見出している。IL33KOマウスならびにST2KOマウスを用い、その可能性について詳細に検討する。脳梗塞後に再分布を生じる細胞外マトリックスタンパク質であるフィブロネクチン、ラミニンに関する情報発信を行ってきたが、内皮由来パールカンやペリサイト由来ビトロネクチン, コラーゲンtype Iに関しても興味深い成果を得ており、これらのマトリックスタンパク質がペリサイト動員やペリサイト-マクロファージ相互作用にどのような影響を及ぼすかについても検討を継続する。
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