研究課題/領域番号 |
20H03794
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川合 謙介 自治医科大学, 医学部, 教授 (70260924)
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研究分担者 |
石下 洋平 自治医科大学, 医学部, 講師 (30835632)
島崎 久仁子 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40142153)
手塚 正幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (40721311)
中嶋 剛 自治医科大学, 医学部, 講師 (60625995)
國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80713940)
佐藤 信 自治医科大学, 医学部, 助教 (80742345)
高橋 宏知 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (90361518)
大谷 啓介 自治医科大学, 医学部, 講師 (90790676)
大貫 良幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (90835993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 迷走神経刺激 / 大脳皮質ネットワーク / 多点脳表脳波 / てんかん / てんかん外科 / 海馬 / 記憶 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大脳への電気刺激や外科的介入がもたらす機能的変化及び形態的変化を明らかにすることである。特に長期刺激や手術後長期の変化を、大脳皮質局所から大脳全体までマルチスケールに捉えることを目標とする。すなわち、(1) ラット迷走神経刺激(VNS)長期刺激モデルを用いた聴覚野皮質と海馬における局所微小ネットワーク特性の変化と形態的変化の検証、(2) ミニブタ脳表電気刺激モデルを用いた脳回単位での多点脳表脳波とfunctional near-infrared cortical imagingによる機能的ネットワーク特性の変化と形態的変化の検証、(3) ヒトてんかん手術およびVNSによる大脳全体のネットワークと形態変化の検証を行う。R2年度の大部分は新型コロナウィルス感染症により研究が停止した。R3年度より実質的に研究を再開した。(1)では成体ラットでまず急性刺激実験を行い、VNSがノルアドレナリン作動性ニューロン及びコリン作動性ニューロンを通じて聴覚野における刺激へのオンセット反応と高周波活動を亢進させることを見出した。誘発電位P1は視床から皮質への出力を、高周波帯域の活動は皮質内を伝播するボトムアップの情報伝達を表しているとされており、VNSがボトムアップ方向の情報処理を高めることが示唆された。さらに長期刺激モデルの準備を進めた。(2)についてはブタ実験のために多施設から共同研究者が集合する必要があったが、残念ながら新型コロナ感染症の影響でブタ実験の継続が困難となった。すでに実験が完了している皮質切開の皮質誘発電位に対する影響についてまとめて論文作成を進めた。(3)については、これまで側頭葉切除や海馬多切術の前後のfMRIによる記憶課題での賦活領域や安静時ネットワークの解析を行い、記憶の一時的障害とその後の回復の背景をなす機能的ネットワーク変化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、2020年度の計画は、(1)ラット迷走神経長期刺激(VNS)モデルを用いた聴覚野皮質と海馬における機能的ネットワーク特性の変化と形態的変化の検証 として、成体ラットにVNSシステムを埋設し 、1ヶ月(n>5)および4ヶ月(n>5)の刺激を行い、聴覚刺激および急性誘発発作時の聴覚野皮質における微小多点 LFP記録を行い、ネットワーク特性の変化を急性刺激時やシャム刺激と比較する。さらに、摘出した脳において、先行研究と同様に海馬および聴覚皮質の体積、層構成、介在ニューロン数、海馬神経細胞樹状突起の分岐状態を定量化し、海馬前駆細胞数、BDNFとbFGFの発現についても比較を行い、長期刺激による機能的ネットワーク特性の変化と形態的変化を明らかにする。(2)ミニブタ脳表電気刺激モデルを用いた脳回単位での多点脳表脳波とfNCIによる機能的ネットワーク特性の変化と形態的変化の検証としてミニブタにおける慢性電気刺激モデルの確立を行う。(3)ヒトてんかん手術およびVNSによる大脳全体のネットワークと形態変化の検証として、海馬多切術の症例数を増やして機能的ネットワーク解析を進め、 術後6ヶ月、1年、3年における大脳の形態学的変化をvoxel based volumetry で解析することとしていた。しかし、上記のように新型コロナウィルス感染症の蔓延により、研究全体の進行が遅れている。また、今年度はリアルタイム処理装置の追加だけでなく、ユニークメディカルのシングルユニットレコーディング用の装置を計上した。しかし、薬事認可のある安全性の高い製品にバージョンアップすることになったため、日本光電の256ch記録装置の購入を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
(2)のミニブタ実験については、これ以上の実験の遂行は困難と判断されるので、これまでの成果をまとめることに注力する。 (3)も2021年度終了時点で、症例の追加よりも結果のまとめに注力する方針である。 一方、(1)については、長期刺激モデルが確立したので、さらに動物実験を継続させる。
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