研究課題
我々はこれまでに中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)の包括的遺伝子解析を施行し、全身性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と異なる特徴的な遺伝子異常パターンを報告した。しかし、PCNSLと全身性DLBCLの病態の類似性および相違性については未だに明らかではない点が多い。本研究では、PCNSLにおける腫瘍細胞および免疫微小環境の多様性を解明することを目指す。 2023年度も引き続きPCNSL臨床検体を用いて、100種類を超える表面マーカー解析、mRNAトランスクリプトーム解析、TCR/BCRレパトア解析を同一の単一細胞から取得可能な単一細胞マルチオミクス解析技術を用いたライブラリーを作成し、次世代シーケンサーによるデータ取得を行った。これらのデータ解析により、PCNSLではCD8陽性のエフェクター/メモリーT細胞と疲弊T細胞の増加を認めることが明らかになった。さらに、PCNSLではクローナルT細胞の増加が顕著であり、それら細胞の一部は、疲弊T細胞の主要な調節因子であるTOXの異常な活性化やストレス応答反応(HSPA1Aなど)の亢進などの特徴的な表現型を示した。これらはPCNSLに特徴的な免疫微小環境が存在することを示唆している。また、均一の標準治療を行った患者群における治療奏効の違いを予測する腫瘍固有な遺伝子変異を含めた因子解析も計画している。生検標本を用いたリンパ腫関連遺伝子のパネル検査を作成し、腫瘍標本からの予備実験を実施した。治療後の経過を含む情報とパネル検査による変異の層別化により、奏効や生存期間等の治療アウトカムと関連する予測因子の抽出を現在継続して準備中であり、次年度以降に解析を予定している。本解析の総合結果から、治療選択に寄与する可能性が期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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