研究課題/領域番号 |
20H03799
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
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研究分担者 |
山神 良太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00722191)
森 大典 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (60835354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 整形外科学 |
研究実績の概要 |
関節を健康に保つためには”適度に”動かすことが重要で、一定期間固定していると拘縮してしまう一方で、酷使すると過剰な力学的ストレスによって軟骨が変性して変形性関節症 (Osteoarthritis: OA) に至る。申請者らは長年の研究の中で、軟骨細胞にかかる過剰な力学的ストレスの蓄積が軟骨を変性させる分子機序の全貌を解明してきたが、関節単位で見た場合に適度な運動がどのように関節の恒常性維持に繋がるのかは未だ不明であった。申請者らはこれまでの研究成果と予備検討の結果から、これらの鍵を握るのは滑膜であるという知見を得て、滑膜のメカノバイオロジーに立脚した本研究計画を立案した。滑膜に存在する細胞集団がどのように力学的ストレスに応答し、それぞれの集団がどのようなシグナルによってクロストークし、さらに軟骨や骨、半月板、靱帯などの関節構成組織に影響を与えるのかについて、尾部懸垂・関節固定モデルやトレッドミル走行負荷モデルなど多彩なin vivoモデルをベースに、シングルセル-RNAシーケンス解析、微小発現解析など最新の分子生物学的手法を駆使して解析を進めてきた。 2021年度は滑膜においてどのような細胞がどのような機構で力学的ストレスを感知・応答するか、シングルセル-RNAシーケンス解析を駆使して探索を進め、段階的に異なる免疫細胞が増加してくることを解明した。薬剤を用いてその責任細胞を除去したところ、関節不動化による滑膜線維化は抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シングルセル解析が順調に進み、予想以上の進捗が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
力学的ストレスを最小限にしたモデルにおいて滑膜の線維化と関節拘縮が見られ、それに続発して関節軟骨の変性が見られたことから、これらの背景にある分子メカニズムの解明にも挑む。2021年度までの解析で得られたデータから、Col1を強発現する細胞の種類とサブセットを絞り込み、力学的ストレスが消失した状況でどのような細胞内パスウェイを経てCol1が発現するかを調べる。並行して、力学的ストレス消失時に滑膜の各細胞種・サブセットで液性因子の産生がどのように変化するかも調べ、軟骨を変性させる原因も探索する。関節の運動の中で滑膜がどのように力学的ストレスを感知・応答しているかが分子単位、細胞単位、組織単位で明らかとなり、さらにこれらの破綻が関節拘縮やOAなど病的な状況を引き起こすメカニズムも明らかとなる。最後に、これらの責任分子・経路が関節拘縮やOAの治療標的となりうるか、マウスモデルでの検証を目指す。
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