研究実績の概要 |
我々は、椎間板変性の原因遺伝子CILPを同定し(Nat Genet, 2005)、そのトランスジェニックマウスは、加齢により変性が促進した(BBRC, 2014)。また椎間板変性を進行させるADAMTS-5のsiRNAにより椎間板変性を抑制することを報告し(Arthritis Res Ther, 2009)、その上流のc-fos/AP-1阻害薬 (T-5224)を使い椎間板変性、破壊抑制効果および疼痛軽減能力を発見した(Sci Rep. 2017)。近年scRNA-seq解析にて破骨細胞起源の一部が、胎児yolk-sac (YS)に由来することを報告した (Nat cell biol, 2019)。今回我々は、思春期特発性側弯症の原因として黄色靭帯肥厚が関与する可能性も突き止めた(IJMS, 2022)。さらにヒト皮膚細胞にKlf4, c-Myc, NOTO, SOX5,6,9遺伝子を導入し、direct reprogramming法とアルジネートビーズ3次元培養の併用によりiPS髄核細胞を作成することに成功し、報告した(IJMS, 2022)。これで、ヒト皮膚細胞から直接髄核細胞を作成でき、細胞治療が可能となる。椎間板再生治療には、細胞治療、サイトカイン治療、薬物治療などさまざまな方法をこれまでも試みてきたが、細胞治療には、再生治療の可能性が最もあるにもかかわらず、細胞ソースに問題があった。本研究により細胞ソースの問題点が解決された。本研究の学術的意義は、細胞治療に基づく椎間板の再生において、ヒト皮膚細胞から直接髄核細胞に分化誘導でき、細胞治療の可能性を飛躍的に高めたと考えられる。また椎間板再生ができれば、ヘルニアや狭窄症などを含めた腰椎疾患患者の治療に多大な貢献ができ、社会的意義は大きい。
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