研究課題/領域番号 |
20H03802
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市村 敦彦 京都大学, 薬学研究科, 助教 (10609209)
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研究分担者 |
植田 洋平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30848213)
近藤 武史 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (60565084)
伊藤 宣 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (70397537)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞内カルシウム / 軟骨細胞 / イオンチャネル / シグナル経路 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまであまり知られていなかった軟骨細胞内Ca2+制御機構と制御に関わると思われる分子を詳しく解明することにより、軟骨が関連する疾患治療に役立つ新たな知見の取得を目指している。 本年度は新型コロナウイルス感染症による影響により全体計画の遂行にやや遅れが生じたが、概ね研究計画時に沿って解析を進めた。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)と軟骨細胞内Ca2+シグナルの関連についての課題については概ね計画通りに進捗した。すなわち、CNPの室温1時間の処置によって軟骨細胞内Ca2+シグナルが賦活されることが明らかとなった。さらに、薬理学的阻害実験や活性化実験を行うことによってCNP受容体であるNPR2のみならず、cGMPおよびcGMP依存性タンパク質リン酸化酵素PKGがCNPの軟骨細胞内Ca2+シグナル活性化に寄与していることを見出した。また、大コンダクタンスCa2+依存性K+(BK)チャネルやTRPM7チャネルといったイオンチャネルがCNPの軟骨細胞内Ca2+シグナル活性化に関与していることを示す知見を得ており、その検証を進めている。同時に生理機能との関与を調べるため、器官培養軟骨を用いたCNPの評価を行っており、遺伝子改変マウス由来の器官培養軟骨を用いた細胞内シグナル経路と生理機能の関連性について解析を行っている。およその解析は終了しつつあり、2021年度中の論文公表を目指している。 TRIC-Bの軟骨細胞における生理機能解析も平行して計画に沿い進めており、遺伝子欠損による表現系を確定させつつそれにつながる可能性のある細胞内シグナル経路の探索を行っている。網羅的遺伝子発現解析は次年度に繰り越して行う予定である。Caluminについても遺伝子欠損マウスを樹立中であり表現型解析を予備的に実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね研究計画時に想定していた通りに進行しており、部分的には計画を上回る進捗を得られている。CNPと軟骨細胞内Ca2+シグナルに関する解析に関しては、細胞内シグナル経路の評価部分をほぼ終えており、生理機能との関連を確定できれば論文投稿できる状況まで進行している。しかしながら、新型コロナウイルス感染症に伴う様々な制約や講義体制等の変更による影響が不可避であり、全体としては当初計画よりもやや遅延していると言わざるを得ない。特に、網羅的遺伝子解析については解析対象の遺伝子改変マウスの作出が計画よりも後ろ倒しとなったことから次年度に持ち越さざるを得なかった。また、Caluminの遺伝子欠損マウスについてもCreマウスによるゲノム切断が当初の想定よりも非特異的に起こったことなどから複数回の試行を余儀なくされた。今後は遅れを取り戻すように努める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の優先事項は、まずCNPと軟骨細胞内Ca2+シグナルについての評価を完遂し論文を公表することである。論文草稿はすでに完成が近づいており、データの追加が完了次第投稿することができる予定である。投稿後も査読内容に沿った修正や追加の必要性が生じると予想されるため、次年度はその対応にまずは注力することを最優先とする予定である。これと並行し、TRIC-B遺伝子欠損マウスの軟骨細胞の解析を行っていく。具体的には、組織中に観察される死細胞様の細胞の出現率や形態的特徴などを詳細に調べて確定させつつ、これに至る分子的機序の解明を目指して小胞体ストレスやアポトーシスに関連する細胞内シグナル経路の評価を実施していく予定である。また、遺伝子欠損マウスにおける軟骨細胞内Ca2+動態についての評価も合わせて行う予定である。Caluminについては遺伝子欠損マウスの安定的な系統樹立を行い、骨における表現型を観察して確定することを目指す。予備的な検討からは大きな骨の異常が観察されていないため、ゼブラフィッシュなどマウス以外のモデル生物を用いた解析の可能性についても検討していく。
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