腱・靭帯は再性能に乏しい組織であるため、障害が起こると放置しても治らない。iPS細胞などの幹細胞から腱・靭帯組織を誘導し、損傷部位を補填する方法が1つの手段として考えられるが、これまで腱・靭帯細胞を誘導するロバストな方法は存在しなかった。 申請者らは2018年に世界で初めてヒトiPS細胞から靭帯細胞の前段階の細胞である靱帯節細胞を誘導するプロトコールの開発に成功した(中島ら、2018、Development)。しかしこの細胞を将来の再生医療に応用するには、目的外細胞の混入、誘導過程での動物由来成分の使用、生体内機能の証明など、科学的に克服すべき課題が残されていた。そこで、これらの課題を解決するため、本提案では「①靭帯節誘導法からの動物由来成分の排除」、「②分化誘導効率の向上」、「③靭帯節細胞の濃縮法の開発」、「④立体的靭帯組織構築・成熟化」、「⑤移植による生体内機能の検証」、という5つの研究を提案した。 本年度に実施した研究成果については下記の通りである。 ②分化誘導効率の向上:2022年度は、最適化した誘導条件にて複数のiPS細胞株から靭帯節細胞の誘導効率を検証した。その結果、6つのiPS細胞株で、靭帯節細胞のマーカーであるMKXを約90%の高い効率で誘導することに成功した。 ④立体的靭帯組織構築・成熟化:2022年度は、バイオ3Dプリンター・レジェノバを使用した靭帯組織の立体構築のための基礎検討を行なった。スフェアの形成方法、スフェア同士の接着性の有無を検討した。現在、条件を検討中である。
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