研究実績の概要 |
本研究では、対外培養を要する脂肪組織由来間葉系幹細胞(Adipocyte Derived Stem Cells; ADSCs)に比較して培養を要さず簡便に分離可能な脂肪組織由来再生細胞(Adipocyte Derived Regenerative Cells; ADRCs, Stromal Vascular Fraction; SVF)の変形性膝関節症(膝OA)治療有効性の機序を考察することを目的とし、①ヒトADRCsが膝OA軟骨に及ぼす影響についてin vitro共培養において分子生物学的に詳細に検討し、②現在遂行中の膝OA患者に対するADRC治療の有効性評価を臨床スコア・MRIにて行い、さらに治療前後における関節液のサイトカインを解析することによりADRCsの効果を検討する、こととしていた。 ①に関しては、ヒトADSCsあるいはADRCsとヒト軟骨細胞の単層共培養およびpellet共培養のin vitro実験系を行い、ADSRsに含まれる同数のADSCs(10%)との比較においてもADRCsの軟骨保護作用(Collagen2, TIMP-3)が高く、抗炎症作用(TGFβ)が高いことが確認された。これはADRCsに含まれるM2マクロファージがSmad2/3リン酸化を介して関与することが確認され、Journal of Cellular Physiologyに公表した。 ②に関しても、ADRC治療としての1回注射と2回注射の有効性比較評価を行い、いづれもMRI評価・臨床スコアの改善を確認し、高度変形に対しては2回注射が優れる結果を確認し、現在peer review journalに投稿中である。関節液中のサイトカインの計測に関しては検体の収集に時間を要しており、さらなる機序の解明を行う予定である。
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