研究課題/領域番号 |
20H03805
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安達 伸生 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294383)
|
研究分担者 |
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
亀井 直輔 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (70444685)
石川 正和 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座准教授 (60372158)
中佐 智幸 広島大学, 病院(医), 講師 (60467769)
宿南 知佐 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60303905)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 腱・靭帯 / microRNA / 腱修復 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
腱や靭帯は、分子生物学的な情報は他の運動器に比べて極めて少なく、その治癒を促進する治療法は未だ開発されていない。本研究は、microRNA(miRNA)生成に重要なプロセッシング酵素DICERを腱・靭帯特異的にノックアウト(KO)したマウスの解析を行い、腱・靭帯におけるDICERの機能解析と腱・靭帯特異的miRNAを探索した。また、同定したmiRNAとMSC由来エクソソーム(MSC-EV)を組合せた新たな治療法の開発を目指すものである。腱特異的転写因子Scleraxis(Scx)の発現制御領域下にCreリコンビナーゼをノックイン(KI)したScx:CreKI マウスとDicer floxed マウスを交配させ、腱特異的Dicer KO(cKO)マウスを作製した。Dicer floxマウスをコントロール群とし、Dicer cKOマウスにおける腱・靭帯の表現型を肉眼的・組織学的評価、歩行解析、腱破断強度、アキレス腱(AT)組織におけるDicerおよびScxなど各種腱・靭帯関連遺伝子の発現をリアルタイムPCR解析及びRNAシーケンスによる網羅的発現解析を行った。その結果、Dicer cKOマウスは、腱・靭帯関連遺伝子の発現低下を認め、ATなどの各腱で肉眼的脆弱性を認めた。ATの組織断面積は、有意に小さく、電子顕微鏡による観察では、コラーゲン線維径の小さい線維の割合が多かった。そして、歩行時における足関節の可動域の増加を認めた。そして、網羅的発現解析よりコントロール群に比べDicer cKO群で発現が減少し、かつ野生型マウスの腱組織で特異的に高発現している2つのmiRNAを同定した。さらに、MSC-EVsは、異所性軟骨化や癒着を抑えたアキレス腱腱修復を促すことが明らかになったことから、今後、このmiRNAとMSC-EVを組み合わせた治療法の開発を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dicer cKOマウスの表現系解析および腱特異的miRNAの同定については現在論文を投稿しており、査読中である。また、MSC由来エクソソームによる腱修復促進効果についても論文を発表しており(Hayashi Y, et al.,FEBS Letters 2022)、今後これらの知見を組み合わせた新たな治療法について検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
腱で高発現かつDicer cKOによりその発現が有意に減少したmiRNA同定しており、腱細胞分化における同定miRNAの機能について解析を進めるとともに、同定したmiRNAを過剰に内包したMSC由来エクソソームによる腱修復のさらなる促進効果を明らかにし、新たな治療法の開発を目指す。
|