研究課題
腱や靭帯は、運動機能の中心的役割を担うが、分子生物学的な情報は他の運動器に比べて極めて少なく、その治癒を促進する治療法は未だ開発されていない状態である。本研究は、遺伝子発現制御ネットワークに重要な因子であるmicroRNA(miRNA)の腱・靭帯における機能を明らかにするため、miRNA生成に重要なプロセッシング酵素Dicerを腱・靭帯特異的にノックアウトしたマウスの解析を行なった。腱特異的転写因子Scleraxis(Scx)の発現制御領域下にCreリコンビナーゼをノックイン(KI)したScx:CreKI マウスとDicer floxed マウスを交配させ、Dicer cKO マウスを作製した。その結果、Dicer cKOマウスは、腱・靭帯関連遺伝子の発現低下を認め、アキレス腱などの各腱で肉眼的脆弱性を認めた。アキレス腱の組織断面積は、有意に小さく、走査型電子顕微鏡による観察では、コラーゲン線維径の小さい割合が多かった。また、歩行解析の結果から足関節の可動域の増加を認めた。さらに損傷モデルでは、Dicer cKOで腱修復過程に頻発される軟骨化成がより形成され、修復に異常が生じていた。そして、small RNA-seqによる網羅的発現解析よりコントロール群に比べ発現差が大きく、腱組織で高発現しているmiRNAを同定し、そのmimicの腱前駆細胞への過剰導入は、腱関連マーカー遺伝子の発現を誘導した。このmiRNAを過剰導入したMSCの培養上清より細胞外小胞(EV)を単離し、腱前駆細胞へ添加した場合でも、細胞にEVフォームとして目的miRNAが導入され、機能することを確認した。現在、この目的miRNAを豊富に含んだMSC-EVをアキレス腱損傷モデルに局所投与し、その治療効果を明らかにするとともに、同定miRNAの腱発生・成熟への役割を遺伝子改変マウスにより明らかにしていく。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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