研究課題/領域番号 |
20H03811
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中島 正宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (10338692)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 後縦靭帯骨化症 / OPLL / 疾患感受性遺伝子 |
研究実績の概要 |
OPLLは遺伝要因と環境要因の相互作用により発症する多因子遺伝病であると考えられているが、その成因、遺伝要因には不明の点が多い。我々は世界で初めてOPLLのGWASを行い、OPLLの発症と関連する遺伝子多型が存在するゲノム領域を複数発見した。本研究の目的は、OPLLの発症に関与する疾患感受性遺伝子を同定し、同定した遺伝子の機能解析研究を突破口に、OPLLの病態を分子レベルで解明することである。 本年度は、GWASで同定したゲノム領域からOPLLの原因となる疾患感受性遺伝子多型および疾患感受性遺伝子多型のバリアントにより影響を受ける疾患感受性遺伝子の探索を行った。これまで同定したOPLLの発症と関連する14個のGWAS領域の遺伝子多型とその近傍100 kbのFANTOM5 CAGE tagの発現量との関係について、機械学習を応用したin silico mutagenesisによる予測を行った。その結果、間葉系幹細胞、骨芽細胞や軟骨細胞といったOPLLに関係する細胞において、12番染色体の遺伝子多型がCCDC91の一つのCAGE tagの発現と関連するという予測を得た。このCAGE tagを転写開始点とする転写物はデータベースになかったため、RT-PCRや3'-RACEを行い、CCDC91の新たな転写物(splice variant)を同定した。本splice variantはCCDC91の主要なsplice variantと翻訳領域を共有するが、翻訳領域の途中でポリアデニル化が起こり、停止コドンが存在しないことがわかった。こうしたmRNAはnon-stop mRNAとして知られており、通常non-stop mRNAはnon-stop decay (NSD)により分解されるが、本splice variantは靭帯を含む組織で発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定通り、GWASで同定したゲノム領域からOPLLの原因となる疾患感受性遺伝子多型および疾患感受性遺伝子多型のバリアントにより影響を受ける疾患感受性遺伝子の探索を行った。また、当初予定していたin silicoでの疾患感受性遺伝子多型と疾患感受性遺伝子の予測方法に機械学習を応用したin silico mutagenesisによる予測を加えた。その結果、12番染色体の遺伝子多型がCCDC91の一つのCAGE tagの発現と関連するという予測を得た。このCAGE tagを転写開始点とする転写物はデータベースになかったため、RT-PCRや3'-RACEを行い、CCDC91の新たな転写物(splice variant)を同定した。本splice variantは翻訳領域の途中でポリアデニル化が起こり、停止コドンが存在しないnon-stop mRNAであった。また、luciferase assay、electrophoretic mobility shift assayなどのin vitroでの解析の結果、予測された疾患感受性遺伝子多型のリスクアレルはsplice variantの発現を上昇させることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、同定したCCDC91のsplice variantの機能解析を行う。これまでのところ、non-stop mRNAが何らかの機能を持ち、それが疾患の原因になるという報告はない。リスクアレルによりsplice variantの発現量が上がると、なぜOPLLになるのか追究を行う。
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