OPLLは遺伝要因と環境要因の相互作用により発症する多因子遺伝病であると考えられているが、その成因、遺伝要因には不明な点が多い。われわれは世界で初めてOPLLのGWASを行い、OPLLの発症と関連する遺伝子多型が存在するゲノム領域を複数発見した。本研究の目的は、OPLLの発症に関与する疾患感受性遺伝子を同定し、同定した遺伝子の機能解析研究を突破口に、OPLLの病態を分子レベルで解明することである。 本年度は、OPLLの疾患感受性遺伝子と考えられる、遺伝子データベースに登録されていないCCDC91の新たな転写物(スプライスアイソフォーム)の骨芽細胞分化促進の機序について解析を行った。新しいアイソフォームは、long non-coding RNA(lncRNA)に分類される。LncRNAはさまざまな機能を持つが、その一つとして、microRNAと結合し、microRNAの活性を調節するというcompeting endogenous RNA (ceRNA)としての機能が知られている。 新しいアイソフォームに結合するmicroRNAをin silico予測したところ、骨芽細胞分化に必須の遺伝子であるRUNX2をターゲットとするMIR890が見つかった。新しいアイソフォームは、予測通りMIR890に直接結合した。MIR890はRUNX2の3’UTRに結合し、RUNX2の転写と翻訳を抑制した。MSCにMIR890を過剰発現させると、骨芽細胞分化は抑制された。このことから、新しいアイソフォームは、MIR890との結合を介してRUNX2の発現を上昇させ、骨芽細胞分化を促進することでOPLLの骨化に関与することが示唆された。
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